メキシコは、82年に極端な外貨不足による金融危機に陥ったため、同年9月以降全品目をI/L(輸入事前許可)品目とする輸入規制を行った。
しかし、厳しい輸入規制は原材料の供給不足による生産の縮小、価格の上昇、更には国産原材料の代替による品質の低下と輸出製品の国際競争力の低下をもたらした。
こうした弊害を除去するため、更には国際通貨基金(IMF)の強い要望もあって、84年7月以降徐々に輸入の自由化が進められてきた。
85年6月には、大幅な輸入自由化が行われ、国内産業の保護も、従来のように数量的規制によらず、関税率を通じて行うという政策転換が発表され、86年8月にガット(関税および貿易に関する一般協定)への正式加盟を果たした。
その後、輸入事前許可品目の削減、関税率の引き下げ、公定価格の撤廃による貿易の自由化が一段と促進された。
しかし、輸入事前許可(I/L)の対象品目は、貿易収支の動向次第で変化する。例えば、89年12月には新たにI/L対象品目が追加指定された。このうち、大部分の品目については90年10月末まで、残る品目は90年3月央までが、適用期間とされたことがあった。
メキシコの輸入事前許可、輸入割当および輸入禁止などの輸入規制は、次の目的で行われている。
(a)一時的に国際収支のアンバランスを是正するため。
(b)国民経済・国内法規および公共の利益のため必要な場合。
(c)メキシコが加盟している国際条約や協定の履行上必要な場合。
(d)第三国によって一方的にメキシコからの輸出に対して課せられた規制に対する対応策として。
(e)輸入品が国際慣行に反する条件で国内市場に持ち込まれるのを防止するため。