古い歴史と文化を誇るモロッコは観光資源に富み、フランス、スペイン、英国、西独をはじめ世界各地から観光客(87年は約220万人)が訪れている。87年の観光収入は79億ディルハム(約1,327億円)に達しており、国際収支の改善に貢献している。
モロッコ経済の問題点としては、次の事項があげられる。
(1)経済基盤が一次産品に大きく依存しているため、経済動向が天候、国際市況という外的要因に左右され易い。
(2)主要輸出商品の燐鉱石が世界的需要減退によって伸ぴ悩んでいるのに対し、開発計画に伴う資本財、中間財の輪入が増加し、貿易収支の赤字幅が増大している。この結果、国際収支の悪化を促進し、開発計画の手直し、大規模プロジェクトの延期をもたらすなど、経済運営において制約要因となっている。
(3)人口増加が年率3%と高く、人口の都市集中化が著しいため、失業問題が顕在化している。人的資源の質的な面にも問題がある。近年、人材養成に力を入れているが、短期間で良質な労働力を創出することは不可能であり、良質労働力の不足が開発計画の推進に大きな障害となっている。
貿易関係では、モロッコの貿易パタンは、農産物、鉱産物などの一次産品を輸出し、工業製品を輸入するという発展途上国に共通するものである。
貿易収支は、恒常的に赤字を示しており、対外累積債務も86年末現在167億ドルにも達している。