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  (E)取引ルート

 フィリピン国内での取引は、マニラおよびセブがその中心地であり、これらの地にある各海運会社や船主と接触することが正常な取引ルートであるが、船主が融資を受けるために最も利用するPDCPの融資の可否の審議には、投資委員会(Board of Investment−BOI)の承認如何が重要な役割りを果たすので、このBOIへの働きかけも取引きをスムーズに進展させるための一つの動きとして必要である。

(7)競争相手国との競争条件の比較

  (A)延払い、船価、品質等条件の比較

 フィリピンは、一般の船舶輸入に対しては、特例を除いて原則として、関税が10%、漁船、パージ、ヨットなどボート類には、国内造船業保護のため30%が課せられる。
 従って、この関税が船価に加算されて考えられるため、船主にとって日本の船価が他に比べ割高となる場合がある。
 しかし、船主は輸入に際し、PDCPの融資を受ける場合が多く、このPDCPの金利は可成り高率であり、わが国の延払いに対する金利がこれより遥かに低率であるため、結果において船主にとって有利になる。
 フィリピン市場では、わが国は品質面では他国に比べ優位にある。但し、延払い条件については、ドイツおよびその他一部の新興造船国は、新造船、中古船ともに、わが国より長期の信用期間を供与している。

  (B)輸出対策

 フィリピン開発銀行(DBP)は、内航用商船隊増強のための資金として、ドイツの特殊金融公庫(Kreditanstalt fur Wiederaufbau“KFW”)やDeutsche Verkehrs Kredit Bank AG(DVKB)などから借款を受け、この資金をフィリピン船主に融資して、内航船7隻をドイツ造船所へ発注したことがある。
 これは、ドイツ側がフィリピンにおける船舶の重要性と需要度の高い資本財であることを認識して、将来の輸出拡大を目指してとった一つの対策である。
 また、最近の実例としては、フィリピン国営のPhilippine National 0il Co.(PNOC)Tankers Corporationは、老巧化した自社船隊の代替建造を目的として、3,500DWT型タンカー5隻の対外新造発注を計画し、その建造資金として円借款の供与を受けて日本造船所に発注したい希望もあったとされ、大手商社のうちには駐在員を急派するなど、計画の実現に積極的な意欲を示し、将来における同国への輸出発展に全力を尽くしたこともある。

 

 

 

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