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視程が50〜100m以下にならないと目立った探知距離の減少がないことがこの図から分かる。

9・9・5 レーダー断面積

レーダーの電波が何らかの物体に当たったときは、その物体の材質や形状及び大きさなどによって、その電波がどうなるかが変わってくる。材料が金属のような電気の良導体のときは、当たった電波のエネルギーのほとんどすべてが反射をされ、その反射波が方向的にどのように分布するかは、その物体の形や大きさによって決まる。このような電気の良導体に属する物体には鋼船、橋、浮標、陸上における鉄製の建造物及び海水などがある。これに対して,木材のような誘電体は、当たった電波のエネルギーの一部を反射するとともに、残りのエネルギーはその物体を透過するか、あるいは、その一部が物体内に吸収される。このときに反射されるエネルギーの割合がどの程度であるかは材料の性質による。例えば、プラスチックの場合は、ほとんどのエネルギーがそれを透過すると考えてよいであろう。このようなエネルギーの一部を反射する物体としては、木造船、陸地及び木造家屋やコンクリート製の建造物等がある。

いま、電気の完全導体である金属体を考えて、その物体が半径rの球であったとする。そこへ、距離Rにあるレーダーからの電波が入射したとすると、完全な球体の鏡に平行光線が入射したときのことを考えれば分かるとおり、このような球形の鏡は四周に均一に光を反射するが、それと同じように金属球も、四周に均一にレーダー電波を反射する。しかし、レーダーで受信するこの球からの反射波は、レーダーの方向に戻ってくるごく一部の反射波に限定される。また、この球をレーダーの方向から見た断面積は、レーダーがどの方向に当たっても常にπr2である。

レーダー電波のうち、何らかの物体からの反射波がレーダーで受信をされる式は、(9・12)に示すレーダー方程式である。このレーダー方程式の中にあるレーダー断面積σは、その物体による反射波の性質を、上述のような完全導体の球に置きかえて考えたときに同じ反射波が得られる球の断面積として表される。例えば、3cm波のレーダーで、一辺が30cmの鉄板がレーダーの空中線に正

 

 

 

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