第2編 舶用工業の情報化の現状と今後の対応
第1章 舶用工業における情報化の必要性
インターネットが家庭用にまで浸透しはじめ、数年後にはパーソナルコンピュータ(PC)の出荷台数が世界で一億台を越えると言われている(参照文献〔11〕)。こうした情報技術の急速な展開は単に一技術分野に留まらず社会全体を巻き込んだ新しい潮流、高度情報化社会、を形成しようとしている。インターネットは大量の情報を双方向に伝達できる点やコストの低さで従来の情報伝達手段にない利点を持っていることから、高度情報化社会を支えるインフラとして、確固たる位置を占めるようになってきた。
我が国の製造業はバブル崩壊を期に生産形態の基本的な見直しが必要となっている。また、円高により、大量生産方式は、海外の生産コストとの競争力を失い、生産の海外展開に一層の拍車がかかった、そのため国内では生産の空洞化が進行し、我が国の製造業は生き残りをかけて戦略の大きな転換を余儀なくされてきている。21世紀を見渡した時、進むべき方向は、過去に製造部門を中心に営々と進められてきた改善の問題の延長線上に見いだすのではなく、顧客や市場の二一ズに対応できる製品を、最も効率よい方法で、安く、早く市場に出すために、開発から生産までが継ぎ目なく、より高度な付加価値を付けられる仕組み、すなわち高度情報化システムの構築をめざしたものでなければならない。
舶用工業においても、アジアの新興工業国を始めとして海外からの圧力はますます高くなりつつあるが、まず重要なことは、21世紀に向けて高度情報化に対応することが企業が生き残るための必要条件であることを共通の認識として持つことである。
1.1内外における情報化の動向
1.1.1情報化の動向
製造業における情報化の歴史は、コンピュータの導入からCAD/CAM/CIM化の流れとして見ることができる、これまでの情報化は社内の部門毎の業務にコンピュータする限定されたものであったが、導入によって、著しい効果が得られた。その後オイルショックなどを経て、より高い生産性が求められる中で、生産性の評価は次第にその視点を点から面へと変化していった。すなわち従来の基準である部分の最適化と同時に全体の最適化によってより大きな効果が求められる様になった。
この様な背景の中から全体の最適化をめざすコンセプトとして、CALSが注目されるようになった。CALSはもともと米国国防総省で始まった軍におけるべ一パーレス化の中から生まれたが、やがて全体の効率化、最適化をめざしたものに変化していった。1993年に連邦政府の政策として、政府調達システムの構築に取り込まれ、2000年をめどに具体的なマイルストーンが示されるに至った。このシステムが完成すると、CALSに対応できない企業は政府調達に参入できなくなる。これは政府調達の問題にとどまらず、民間の商取
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