日本財団 図書館


 

今後は「ウェルカムプラン21」の推進を
TAP会議の成果は「意識を改革」

福田 彰・(社)国際観光旅館連盟名誉会長



003-1.gif

TAPを最もよくご存じであると伺っております。これまでTAP会議に参加した印象からお願いします

福田 80年代後半、わが国の観光政策は、海外旅行を1千万人にする「テンミリオン計画」を推進しておりましたが、国内振興も必要と唱えられ、具体化したのがTAPです。私は従来の政策の中で最も大きな関心を持ちました。私は2回目の宮城・山形会議から出席させていただいております。

TAPの成果については、どう評価されますか

福田 TAPの一番の効用は、観光に対する意識改革を行ったことです。今でこそ「地方の時代」だといわれ、知事さんも観光を論じないと、選挙に当選しない時代になったわけですが、昭和28〜29年当時は観光を口にすると落選していたんです。その変化は大変なものです。ただ県によって多少の温度差はあります。やっぱり観光を生かさなければならない県と、そうでない県の違い。もう一つは、地方会議の開催を2県以上にまたがるべきだという発想をしたんです。それはなぜかというと、以前九州運輸局長に申し上げた例ですが、「九州にはたくさんの歴史的な観光資源がありながら、脚光を浴びない。それをご存じですか。ぜひ観光の広域化を推進して下さい」とお願いしたんです。九州というのは大名時代から、お互い隣同士の足を引っ張り合うということが多かった。ところが、今の観光は広域で考えないと促進されない。他県との連合も考えなければいけない。実際に1県でやったのは北海道と昨秋の沖縄だけ。他は全部2県以上にまたがり四国の場合は4県でやりました。

会議がうまく機能した地域はございますか

福田 岐阜県と滋賀県の場合はその一つの例です。私は当初からこれは成功すると思いました。なぜかというと、経済圏が別で、新しい経済ルートを生み出すのにちょうどいい。しかも岐阜則こは工芸的な文化があり、滋賀県には別の意味の歴史的資源がある。それを融合すれば新しい観光ルートが生まれるじゃないかと話をしたんです。

もっとも印象深かった地域がございますか

福田 北海道に行った時、当時の知事さんである横路さんがおっしゃってましたけど、今までは石炭とか林業・農業がダントツだった。それが今では、観光産業が一番の地域振興だと。だから好むと好まざるに関係なく、観光に目を向けなければならない時代だということを言明していました。そのほか割合にうまくいったケースとして宮城県と山形県。現在でも両県の話し合いが進んでいるようですよ。

一方、何か問題点がございましたら…

福田 逆に広域観光のデメリットも出ているのではないでしょうか。昔だったら、隣の盆踊りしかなかった。今は沖縄に行くよりもフィリピンに行った方が安い。以前に沖縄旅行で航空会社とタイアップしたホテルばかり潤う。しかも、パックツアーを利用すると半額近い価格になり、パックツアーを利用しない一般の旅行者はフルに金額を取られる。それは問題だと指摘したら、多少離島の税金を安くし、個人の団体旅行の割引も認めましたね。

これからの観光振興に関するご意見はありますか

福田 最近私の哲学は、文明は儲かるけれども、文化は儲からない。また文明は文化を破壊すると言っています。結局、人間の価値観、道徳観の変化につながることですよ。今年の賀詞交歓会でも話をしたんですが、ソクラテス時代にすでに個人の生活・倫理観・レジャーが三大要素だったという記録があるんです。要するに本質的にレジャーは必要だということが二千年前から言われていたんですよ。今、国内の観光地の振興が大きな課題となっております。その推進方策としては「ウェルカムプラン21」があげられますが、もっと広く理解を得るよう強力に推進すべきです。やはり外国の人が日本に行ってみたいという空気をつくる。そういう魅力を開発してもらいたい。

最後にこれからのTAPのあり方について一言…

福田 地域の特性をどう活かすか。自治体のそれぞれの首長の感覚によって違いが出てくると思います。ただ、観光というのは今日明日という問題ではなく、長期的な視点で考えるべきもの。そのあたりが理解できないといけません。これは教育制度につながってきます。今の教育制度をもう一度見直しが必要だと感じております。また、観光行政は他省庁にまたがる問題が多いので、観光省とか、せめて観光庁にでもなって欲しいと思っております。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION