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このような力のかかり方をねじりといって、薄い甲板などに図のような斜めのシワができることがある。また、ねじりは以上の他にも、船に荷物を左右に不均一に積み込んだとき、船が横波を受けて横傾斜した場合には静水中においても起こる。
(e)波の衝撃
船が大洋を航海しているとき、とくに荒天の際には船が激しく横揺れ、縦揺れして、船首部あるいは船尾部が波のためにひどい衝撃を受ける。これをパンチングという。
またそのようなときには、波が船にぶつかるばかりでなく、縦揺れによって船首部が下がるとき水面を強くたたくことになるので、そのために、船首からおよそ船の長さの1/8〜1/6くらいの後方の船底の傾斜が平らになりはじめる部分が激しい衝撃を受け、その部分の外板が内側にへこんで、やせた馬の胸のようにフロアだけがとび出したり、フロアそのものも曲ったりすることがある。このような船首船底部に対する波の衝撃をとくにスラミングといい、船尾機関船や船尾トリムの大きい船が波浪中を高速で突っ走る場合に、スラミングによる船底凹損が起こりやすい。
これらの衝撃による損傷が起こると、外板はホッギング、サッギングによって生じる圧縮力その他の力に耐える強さを弱められるばかりでなく、船体抵抗を増したり、リべットがゆるんだり、溶接部にヒビがはいったりして水密を破るようなことにもなる、このような損傷をおこさないために、船首尾部にパンチング構造(防撓構造)を設け、また船首船底部をも補強する。
 
2.3 縦強度
 
さきに述べたように船にかかる力はきわめて複雑であって、力の種類もその大きさも、簡単には決めることは難しい、。外力を正確に決めることができれば、正しい強度計算ができないから、船の真の強さすなわち絶対強度というものはわからない。しかし、絶対強度がわからなくても、ある一定の手順で計算を行なった結果、現に無事就航している基準船と同等もしくはそれ以上の強さがあることが証明できるならば、それでも実際上の目的は十分達し得るわけである。このように、船の比較強度を求めようというのが、縦強度計算の根本の考え方である。したがって、比較すべき強度として何を選んでもよいわけであるが、船の総合的強度を推定する上で、現在では最大曲げ応力の比較計算を行なっている。
 
2.3.1 標準状態
 
船体強度のうち、縦強度は最も重要なもので、その計算は標準状態における船の縦曲げ強度を求めるものである。その標準状態は実際に生じ得る最悪の状態になるべく近いことが望ましいが、その限界が明らかでないこと、各々の場合にその状態をいろいろ変化させる面倒を避けて一定の標準状態を想定し、その代りに許容応力を各場合に応じて適当に加減している。船が洋上で出会う波の大きさの標準として、つぎのようなものを考える。
波の形はトロコイドである。
 
 
 

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