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がよいが、新造と両方やる場合には新造部門の中の一部門として責任者をおく程度として、作業員は新造工事と共用する場合もあるが、修繕工事というのは一般に臨機応変、なにが飛びだしてくるか、予測できないから、修繕部門の主体は、長年の経験の多い多能工を配置して、場合によっては新造部門から応援にいくといった態勢が便利である。修繕部の窓口だけは顧客に対して明白にしておく必要がある。修繕部門は、船に対する“アフターサービス”の部門であるから、このサービスの親切度は、新造受注の量に対しても大きく影響してくる。したがって、営業面と同様に重要な人事配置をしなければならない。
船渠・上架船台・塗装といった主として修繕に関係する工事は修繕係の傘下におく場合も多い。また、上下架作業とか、船底洗い、塗装といった、あまりきれいでない作業は、下請けにまかせがちであるが、上下架や出人渠の仕事は保安上も重大な作業であるから、その責任者は組織上明確にしておかなければならない。
 
1.3.9 組織の運営
 
(1) 営業に自由度を
小造船所では、社外請負が工事の相当部分を占めるので、それに対し積極的な管理が工場の生産能率を向上させることになる。そこで、組織も運営に“自由度”を大きくする必要がある。これは一種の機能の高度化であり、また機構の単純化である。ただ、この機構を極端に単純化すれば、作業者は逆に多能化してしまう。すなわち一人でなんでもやれる作業員がほしいことになる。そういう多能工というのは、そう一朝一夕にできるものではなく、それを養成するとなれば時間がかかる。時間がかかれば企業の能力の伸びをおさえることになりやすい。この点、前に述べた標準的な組織の例は、これらの単純化をとり入れて重点的な管理のやり方をあげたものであるが、これとても、その企業の大きさによって、もっと単純化して多能化しなければならないかも知れない。いずれにしても、この組織の“粗らさ”は各自で実情に応じて運営面からもきめるべきものである。
(2) 管理システムのあらさ
組織の機構、あるいは管理のシステムは若干あらくても、少数の幹部が積極的に活躍すれば、管理の効果はあがる。ただ、責任とか、権限とか、業務分担を明確にすることが組織では一番大切なところであるが、これが行きすぎるといわゆるセクショナリズム(各部門、部門で殼に閉じこもって他を排撃する主義)になりがちである。組織というのは、なかなか完全無欠に各部の連絡のとれるものではないから、こうしたセクショナリズムはかえって害になることが多い。大きい企業などではよくこの現象が起こって、内部の横の連絡が半身付随になっていることが多い。小造船所では社内の縦・横の連絡がよくとれて一丸となって、働けるところに、利点を見出さなければならない。実際に組織を運営するに当っては、現実か

 

 

 

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