ここで、分類のDは、アーク溶接棒という意味の記号であり、次の43は引張り強度が43kg/mm2以上であることを示している。次の2桁で、使用姿勢と、被覆剤の種類をしめている。
D4301=イルミナイト系は、最も普通に使用されている棒であり、経済性にも、すぐれ作業性も良好である。
D4303=ライムチタニア系は、イルミナイト系溶接棒と同様に使用されるが、イルミナイト系に比して、価格が少々割り高になるが、作業性はイルミナイト系よりもよく、ビードの外観も美麗であるため、どこの造船所においても、用途によっては、ライムチタニア系を、或る程度使用している。
D4316=低水素系、溶接時に生ずる欠陥の1つに水素によるものがある。従って、溶接を行う付近で、極力水素分を少なくしようとして、被覆剤に工夫をした棒である。低水素系の棒は、慣れる迄、いささか、使いにくい点もあるが、鋳物の溶接とか、厚板や欠陥の生じそうな部分には欠くことのできない棒となっている。最近の立向下進棒にも、この系統のものが多い。溶接部の機会的性質の向上を狙った棒だけに、JISにおける規定も、シャルピーの衝撃試験に対しては、他の系統の棒よりも、大きな値を要求している。
D4327%鉄粉酸化鉄系この棒はグラビティ溶接機等を利用した、水平隅肉溶接の専用棒である。即ち被覆剤の中に鉄粉を含ませて、溶着金属となるものに、心線以外の外部から溶着金属を補給する形にして、溶接の能率化をはかったものである。
一方、心線には、JISで規定があり、他の軟鋼材とは異なり、溶着金属の割れの原因となる、炭素、燐、硫黄の量を低く押えた規定になっている。
被覆剤(フラックス)には各メーカーの秘密成分があり、詳細を比較することができないがこのフラックスの利点を整理してみると次のようになる。
即ち、心線に被覆剤がまきつけてあるのは
a)アークを安定させるため
b)溶接付近にガスでシールドし酸化、窒化を防ぐため
c)溶着金属部で、精練作業を行うには、それに適した被覆剤が必要である。
d)溶着金属に合金元素を加える。
e)溶接後、スラグがまだ完全に固まっていない溶着金属部をおおって急冷を防いでいる。
f)電気的絶縁性を保証する。
どれもこれも、重要な要素ではあるが、すべての条件を具備している溶接棒は得られないので、各メーカーは。上記各項目ごとにどれを優先するかにより、同じイルミナイト系でも、何種類もの銘柄ででき上るのである。