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院の受付で難聴者に対する姿勢というものが、殆ど出来ていないわけですね。ですから例えば、事務的な段階で患者さんの名前を呼ぶ、という時に、難聴者の方は非常にそれが聞き難くて辛いわけです。私はそういうことをいつも頭に持って知っておりますので、病院側に掛け合って、これは皆さんのほうがよくご存知だと思いますけれども、難聴者マーク、これを置くように言うわけです。これを聞きますと病院側はすぐに対処してくれます。非常によく理解してくれるんです。ということは、一般的な認識が非常に浅いということが、逆に言えるわけです。ですから、難聴者の組合或いは協会としては、全国の病院にこのマークの存在をもう少し知らしめる必要があると思います。私はこういう問題に関わってきて……「関わって」というのは大袈裟ですけれども、そういう病院に掛け合ったのは6つか7つの病院にあります。すぐにどんな病院でも即座に応じてくれました。公的な病院と私的な病院とを区別するのは、どうかと思いますけれども、一般には公的な病院というのは、事務的なお仕事をしておられる人は、公務員なのです。言い換えれば、役人なのですね。非常に杓子定規的なところがありまして、聞こえにくいということを個人的に訴えても、中々それに対して同情的な措置をとってくれないところが多いようです。そういうことを一つ申し上げたいと思います。
 三つ目の問題です。これが私の今日お話したいテーマでありますけれども、聞こえない者が健常者と同じく、同じ立場で如何に社会に貢献出来るか、ということを考えるわけですけれども、これは中々大きな問題で、難しい問題だと思います。その中で私が一つ持っております考えがあるわけです。私は耳鼻科の臨床医でありまして、かつて補聴器の相談、補聴器外来というものを設けまして、補聴器の相談、指導などをやっておりました。それは補聴器を扱うという問題であります。もう一つの別の仕事といたしましては、先程からお話がありました人工内耳ですね、これの埋め込み手術というものもやっておりました。そういうものをやっているうちに感じたことは、先程も度々お話が出てきたようでありますが、例えば尾上さまの体験発表の中でも、情報を得て現状よりもさらに良い補聴手段、或いは補聴器を得る、ということをやってまいりますと、古くなった補聴器は機械が性能が良くてもあまり役に立たなくなるわけです。そのような補聴器が全国の家庭の中には沢山引き出しの中に眠ったままになっていることが多いということがよくわかるわけです。補聴器外来をやっておりますと、今までつけていた補聴器がどうも良くない、ということでどうしても新しい補聴器になる。そうすると「今まで使っていた補聴器を下さい」というわけにはいかない。そのまま黙っておりますと、その方はその補聴器の処分をどうするか、といいますと、これはやりようがないので家の中にほっちらかしにしているわけです。こういうような沢山残っている補聴器を集めて、私は補聴器銀行というものを作ったらどうか、と思うわけです。これは一つの組織でありますから、色々な方の協力がいりますけれども、これはすべてボランティアの活動でやればよい。そこには医療関係者も入る、それから補聴器業者の方にも加わってもらう。或いは実際に補聴器をつけた感じというのは、臨床医で普通に耳の聞こえる医者とか、というよりも経験の深い難聴者の方、例えば先程お話にありました遠藤さまとか尾上さまとかいう方が、指導権を握られて、こういう方に指導者になってもらってやって行くというようなやり方なども、一つの考えだと思っているわけです。で、こういう組織をいっぺんには出来ませんけれども、兵庫県なら兵庫県の中で、難聴者協会というものがいくつかあるわけですね、こういう一つの単位の中で作っていく。そしてその輪を広げて行くということをやったらどうか、というのが私の考えです。これは繰り返して申しますけれども、臨床医がですね、医者が、実際に難聴者の方に貢献出来るというのは、手術で人工内耳を埋め込むとかいうようなことだけでなく、或いは補聴器をこういうものをつけたらどうかと、相談する、これは機械を使ってデータをもとにして勧めるのであって、それだけの話で、実際にお互いに健康な耳を持っている者、少し聞こえにくくな

 

 

 

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