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な巡回を考えて後にST.のみの、言語療法士のみのチームとして活動になったようです。
 ここでも同じように避難所でお困りの方に補聴器の提供とか調整を行いました。
 このように現地対策本部の支援活動の一部として、また兵庫県の巡回リハビリチームの支援活動として避難所ならびに在宅の難聴者への補聴器の提供と調整に何度か参加させて戴いた訳です。
 実際には、訪問した際に不在であったりという事も何度か有りまして、実際に難聴者の方に直接お会いしたのは、そんなに多い数ではなかったのですが、その数少ない経験の中で一番印象に残った事は、身体障害者の手帳を持っておられない難聴者、言い替えますと、身体障害者手帳には該当しないと恩われる程度の難聴の方、軽度難聴と言ってもいいかも分かりませんが、そういう方が多かったということです。中には初めて補聴器を使われるという方も結構居られたようです。
 おそらく、現地対策本部の方でも或は兵庫県巡回リハビリチームの方でも、最初は補聴器を無くしたとか壊れたとかいった割と高度の難聴の方を、ある程度想定していたのではないかと思います。しかし実際には、軽度難聴の補聴器の需要が多かったという事でした。
 その中である例ですが、避難所で家族の方がおばあちゃんを夜中にトイレに連れて行かなければいけない。その時に、起こして呼びかけて連れて行かないといけないんですが、大きな声を出せない、避難所は沢山の人が居られますのでそういう声を出せない。小さい声で言うと聞こえない、という事があって補聴器が必要だと。
 また別の例では、家族の方と話をするのに、同じように避難所ではどうしても周囲に気を使ってしまって、家族の方の声が小さくなってしまう、小声になってしまうという事で話が全然聞き取れないという風な事が有りました。
 いずれも、震災前ず一と家に居る時には少し大きい声であれば聞こえていたのでさほど不自由に感じなかった事が、避難所では周囲に大勢の方が居られるということで、大きな声どころか普通の声でさえも遠慮してしまうというそういった事で、軽度の難聴であっても非常に不自由に感じてしまうという事だったのだと思います。
 おそらくこのような方、或はこれに近い方はかなりの数居られたのではないかと思います。 次にこういう方々も含めた難聴者を、できるだけ早い時期に把握する事が、こういう緊急時に素早いまた効率的な支援を行っていく、一つの条件になるのではないかという風に思った訳です。しかし、実際には難聴者全ての方を把握するといった事は不可能だと思いますし、現実的ではないと思われます。
 例えば、難聴者協会のような団体の会員であればその団体内での所在などの把握は今回のような形で行える訳ですが、実際には会員の方の人数は難聴者全体の中では非常に少数だと思われますし、特に中途失聴者の方或は難聴者の方は余計に少ないのではないかと思います。
 また身体障害者手帳を持っておられる方は、役所のほうで把握している訳ですが、個人のプライバシーに関する事になりますので仲々難しい面が有るかと思います。
 またある資料によれば身体障害者手帳の所有されている方の10倍ぐらいの数は補聴器の必要な方が居られるのではないかという風に言われています。ですから役所のほうで把握している難聴者の数と言いましても、全体の中から言いますとほんの一部であると言わざるを得ないと思います。
 こういう風な事を考えて行きますとむしろ難聴者が必ずそこに居るという事を前提に情報提供をしていくという事が必要になるのではないかと思います。その為にはやはり行政福祉機関だけでなくて、難聴者団体或は聾唖団体或は手話・要約筆記などの專門職の方やボランテイアの皆さんですね、また各施設とか、医療機関、補聴器メーカー或はそれの販売店、これらが一緒になって動いて行かないと仲々緊急の対応というのは出来ないのではないかと思います。
 そういう事を行う為には普段からのネットワークづくり、先程から何べんも出てきておりますが、ネットワークづくりが必要になるのではないかと思います。ネットワークといいますと今流行りの

 

 

 

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