へ移っても鍵がかけられないで、鍵をかけないで寝ていることもストレスが高いのです。そして今度は社会復帰、要するに恒久住宅に移って自分が友達をつくって行かなければならない、最もストレスの高いところに聴覚障害をお持ちの方がおかれて行くというような状況が推定されていきます。
私達の災害復興ということでは、ハードの面、建物を造るとか、鉄道を造るとか、あるいは私達の公園、避難所を造るとか、これはどんどん進んでいるのですけれども、ソフトの面、即ち隣近所の人とお友達をつくって、もし震災が今度あっても自分を助けに来てくれる人、そして私と一緒に避難所に行ってくれる人をつくらなければいけない、これはとても大変なことなのです。
これは目に見えない、そして行政もなかなか出来ない、私は行政が出来る限界があると思うのです。実はそういうことは私達市民の福祉だと思うのです。私達市民が、あるいは町民が隣の住民と一緒にお友達になるということを私達これからの高齢化社会の中でつくって行かなければならないと思うのです。
というのは高齢化社会というのはみんな障害を持つのです。会社で一生懸命働いてきた人達も、会社の人間関係から離れて地域の人間関係を作って行かないと孤立をして病気になります。高齢化社会の中における健康というのはまさに家族関係、地域関係の人間関係をよくすることが一つの大きな鍵なのです。これは市民のレベルでしなければいけない健康づくりなのです。
カナダでは私達が引っ越しをする時の引っ越し文化があります。引っ越しをして来る人が隣の家で分かっていますと、サンドイッチを作ったり、スープを作って引っ越しをして来る人を待っております、隣近所の人達が。そして新しく引っ越しをして来た人達に「どうぞ私の家に来てサンドイッチを食べてください、スープを飲んでください」これが私達の習慣です。というのは、引っ越しをして来たばかりの人達は、鍋やお皿やフォークが箱の中にあってすぐ食事ができません。また新しく引っ越しをして来た所に、どこにお店があるのか分からないのです。だから隣近所の人達は引っ越しをして来る人達を食事に呼んで、最初の数日間は交わりをするのです。食事をするのはちょっと裏がありまして、今度引っ越しをして来た人はどういう人かということを見るということがあるのです。一緒に食事をしながら「どういう方ですか、趣味は、どういうお仕事ですか、家族の構成はどうですか」とお話しをするのです。人間というのは食事をしながらお話をすると、血が胃袋へいっていますから心がゆったりとして本音を言うものなのです◎食事の付き合いはとてもいいものです。そしてお互いに知り合うのです。新しく引っ越して来た人は大体隣近所中みんなに招待されるのです、カナダでは。そうすると1週間のうちに私が引っ越して来たところにはどういう人が住んでいるか大体分かるのです。
そして家が落ち着きまして、1週間、2週間たちますと、今度は新しく引っ越して来た人達が隣近所の人達を呼ぶのです。オープンハウスといいます。「どうぞ家へ来て下さい」そして家の中を見せるのです。そして来た人達がそこでサンドイッチを食べたり、紅茶、コーヒーを飲んでお互い交じり合うのです。近所の人はこの人はどういう家具を持って、どういう物があるかというのを見て回るのです。変な文化ですけれどもこれは大事なのです。何故ならば、カナダの人というのは以前は大体ヨーロッパから移民をして来た人で、地縁とか血縁を全部おいてきて個人で来た人達なのでお友達がいないのです。だからお友達をつくる文化があるのです。そういうのが伝統なのです。そして隣近所の人とお友達をつくる、これがまちづくりなのです。
ですから隣近所の人で耳の不自由な人があったら、「何かお手伝いしましょうか」、あるいはお年寄りがいたら「雪かき手伝いましょうか」そういう形でネットワークをつくってまいります。
ところが日本でよく聞きますと、新しく引っ越して来た人はお食事に呼んでもらうのではなく、手ぬぐいを買ってきて隣近所に配ります。都会ではもう手ぬぐいも配らなくなりました。仮設住宅から新しい公営住宅や新しい所へ移った人はそこで孤立してしまう確率が高いのです。だれも食事