日本財団 図書館


うのは難しいということを現場にいますと感じます。でも私たちは火事がないことを願っているだけではなく、本当は目で見える光の火災報知器をつけるのが、障害者用の仮設住宅には必要だということを言い続けております。でもこれは障害者用の仮設住宅ですらついていないのが今の現状です。
 今、仮設住宅ではみんなお友達ができました。最初のころはみんな緊張していました。もう自分の部屋から出たくないのです。自分の家を失っている、家族を失っている、隣近所の友達も失って本当に疲れ切った顔をしておりました。でも1か月たち、半年たち、1年たちますと、お友達がたくさん出来て顔が少しほころびて来ています。小さな仮設なのですけれども、小さな土地に花を植えたりしてだんだんとなごやかになりました。お友達が出来たのです。
 ところがこの5番目の社会復帰期になりますと、今度はやっと住み慣れた仮設住宅から、私達は一人一人バラバラになって恒久住宅へ移るのです。すると折角出来たお友達とまたさよならを言って、新しい所で自分はお友達を作らなければならない。考えてみますと、聴覚の障害を持つ人達は震災前に何年もかけてやっと信頼関係ができて耳の不自由なことを理解してくれるお友達が出来たのに、震災でなくなりました。そして二番目には、避難所で命からがら逃げて命を分かち合った友達がいたのです。そこでまた別れたのです。そして仮設住宅に入ってやっと1年半たってお友達が出来た  のに、この友達とまたさよならを言って新しい所に行きます。ですから被災した人は4回友人を失っている。これは大変ストレスの高い生活を強いられています。そのことを私は今、非常に心配しております。
 これから社会復帰をしていく方々、要するに公営住宅だとか、そういうところに行くと今度は完全に独立した部屋になりますから、お友達をつくるのが難しいのです。そこでは世話をしてくれるコディネーターもなかなかいないのです。孤立をする確率が高い状況なので、私達はそういう所にもしばらくの間、地域の中でお世話をする人を置くようなことを一生懸命考えております。行政も考えております。私達ボランテイアグループも考えております。
 いろいろ福祉の調査をしますと、これは神戸市の調査ですが、多分宝塚市でも同じだと思いますが、隣近所の人と顔も全く知らない、お付き合いがない人というのは5.2%います。大都市では全く地域から孤立をしている人が、全体で5.2%、この数字を私達はいろいろなところでつかんでおります。私達は、障害を持っている人達が隣近所の人の顔を全く知らない人が何%いるかという調査をしました。身体障害者では14.7%、知的障害者の方々は27.9%、そうしますと平均しても障害を持っている人の約20%が隣近所の人の顔も知らないという存在になっています。なんと5人に1人が地域から孤立をしています。私が最初に言った一番死亡率の高い人は社会の中で孤立をしている人、こういう人が一番ストレスが高い、死亡率が高いのです。ですから統計で見る限りでは障害を持っている人達が一番病気にかかりやすく、死亡率も高いということが推定されるわけです。
 特に今度の震災で被災をされた障害を持っている方々は、普段からストレスが高いのです。その上に今私がお話ししましたように、仮設住宅から今度一般住宅へ移って行く時にもっと孤立していきます。人間関係と言うのは一日や二日ではなかなか出来ないのです。
 特に耳の不自由な方々がお友達をつくるというのは本当に何年もかかると思います。そして5年も10年もかかって出来たお友達のネットワークが震災で壊れた、これは目に見えない大事なネットワークが壊れたわけです。そしてまたこれから新しい場所でネットワークをつくるのに5年も、10年も、あるいは20年もかかります。今度の震災で被災した方々にはものすごい失望感があります。喪失感があります。それは自分の家族や、家や、財産を失っただけではなく、自分のことを理解してくれる地域のお友達がいなくなったこと、これが大きいのです。そして避難所でものすごく苦労してストレスが高く、さらに今度、仮設住宅

 

 

 

前ページ  目次  次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION