近年野生生物への一般の関心が高まるにつれて、ダム湖やビオトープとしてつくった池などにカモ類や白鳥などの里鳩が飛来するようになると、その成果をよろこぶ気持はわかるが、珍客歓迎とばかりに、熱心に“餌付け”が始められる。中には個人的な関心を超えて、その地域の“観光資源にされている場合もある。
野生生物の自然の生息場所が激減した現在、節度をわきまえた、そして生態学的にも理由がある人工給餌まで否定すべきではないが、人間の恣意による過度の給餌は決して野生生物に対する愛情の表現ではなく、表3に示したように、かえって人間の勝手な思惑によって野生生物の種の弱体化、すなわち種個体群の生存能力の低下を促進する結果になる。
野生生物に対する本当の愛護というのは、彼らが安心して餌をとり、休み、そして繁殖ができるような、本来の生息場所を保存あるいは創出し、彼らに無償で提供してやることである。このような認識は、野生生物と人間の共存が大切な課題となるこれからの時代に特に重要である。
2)“みんな集まれにぎやかに”型(目然学習園型または箱庭型)
このタイプは、最近の環境設備におけるビオトープづくりの中で最も多くみられるもので、比較的狭い上地の中に、ホタル、トンボ、両生類などのための水路や小さな池や湿地、陸生昆虫たちの餌やすみ場になるさまざまな植物の群落および枯木や落葉の堆積、爬虫類などが身をかくすための空石積みの石垣や栗石の堆積、小鳥たちの餌場や営巣の場所になる雑木林や枯木、タヌキ、イタチ、コウモリなどにねぐらを提供するトンネルや洞窟をそなえた土手や盛り土、水鳥や魚類などのための水草が生育する水辺、等々、多種多様なビオトープの“装置”(表1の小生息場所)がしつらえられることが多い。