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がきまり、総体的な生物の現存量も決定される。また環境がそれぞれの種に対して好的な条件を備えているか否かにより、同一の環境容積に生活する生物相が異なりそれぞれの現存量も変わる。また季節により現存量には変化が生じる。つまりある環境下における現存量は決して定量的なものではなく、むしろ環境の変化(生物・物理・化学的)によりたえず変動をしていると考えられる。河川改修や整備が行われた直後では一時生物全体の現存量は減少するが、環境の復元が行われるような工法や管理が可能であれば現存量の復活も可能といえる。ただし単一種が多量に増えるような管理のあり方は、たとえ現存量が多いとしても均衡のとれた環境復元とはいえない。

「川らしく」するために

 現況の都市河川はその利用の方法が親水域としてよりも水資源の開発と治水優先の改修が並行して進められ続け、人工的な護岸整備は排出される水の浄化を促進する力を弱める結果を生み、水質の悪化をともないながら本来の「河川らしさ」を失っている。今また都市に残されたオープンスペースとしての価値が見直されはじめ、都市空間の整備の一環として水辺の再開発が実施され始めた。都市河川のなかには流水機能を失っている河川も多く、自然環境の再生不可能な河川も多く存在する。排水路化した河川はいうまでもないが、暗渠として整備された河川には生態的機能を期待することはできない。しかし流水機能がまだ確保されているような都市河川であれば、河床や護岸域の再整備によりまず初期的な自然環境は再現可能である。コンクリート河床をやめて転石河床にすることにより底生生物の自然誘致が可能となり、小型でも中洲を設けると湿性植物が繁殖できる環境が設定される。多自然型の整備はこのような小規模の自然再生から完成されるものであり、長期的な完成計画が必要ではないだろうか。また、このような環境整備は河川周辺に生活する住民の認識と協力が必要となるので、河川における親水・空間・利水・自然生態の各機能を深く理解してもらえるよう計画設計が必要ではないだろうか。
 河川の生態系の復元の早さは、整備や改修の規模によりさまざまと思われる。一般的に森林の復元は百年単位といわれているが、この単位にしても伐採後のケア方法により変化する。例えば淡水魚類の側面から推測できることは、河口や産卵床の区域に本質的な改変が行われない場合、産卵期と工期に時間的なずれがある場合、増水時に隠れたり避難できる環境が確保されているような場合の復元(種の多様性の現存量)の早さはかなり短縮されると思われる。
 「多自然型」に改修できた場合の親水利用は、できるだけ心理的満足感を体験できるような形で解放すべきであると考える。そのためには改修にあたって地域住民の参画を得た計画案を作成するようなことも必要であろう。改修後は直接的な親水利用、例えばアウトドアライフを体験するような直接行為を伴ったり車両や道具を伴う行為は検討すべきではないだろうか。とくに再生された直

 

 

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