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代表的な例で、白い毛で被われた細い葉を密に付けて水分の蒸発を防ぎ、丈夫な根を深くはりめぐらせて水分を確保し、砂礫の多い河原にあちこちに散在して団塊状に生育する。そのほか、カワラサイコ、カワラヨモギ、カワラニガナ、カワラノギク、カワラケツメイ、カワラアカザなど、名前にカワラの付く植物は多かれ少なかれこれらの生態的特徴のいずれかをそなえている。
 カワラヨモギーカワラサイコ群集は半地中植物が主体となるが、さまざまな生育型の植物が混在する。群落にはカワラサイコ、カワラヨモギをはじめ、メドハギ、イチゴツナギやギンゴケ、スナゴケなどのコケ類など礫地に特有の種群が生育する。盛夏には極端な乾燥するがカワラサイコやカワラヨモギは長い根茎をもち、長期の乾燥に耐える。カラメドハギーカワラケツメイ群集は優占種となる種は少なく、カワラケツメイ、アレチマツヨイグサ、カラメドハギなど1年生と多年生の草本植物が混生する。生育地は河川中流部の扇状地地形の礫質河床部である。マルパヤハズソウーカワラノギク群集は地表に群生する分岐型植物と、まばらに生育する直立型植物の2層で構成される。種組成はカワラノギクを主とし、マルパヤハズソウーカタバェノコロ・マメグンバイナズナ・ナギナダガヤなどで構成される。関東地方では多摩川、相模川、那珂川に生育し、中部地方の一部の河川まで分布し、河川中流部の扇状地地形の礫質河床部、特に高水敷に発達する。以上の3群落はカワラパハコーヨモギ群団にまとめられ、ヨモギクラスに所属する。

ヨモギクラス(河川敷および路傍植物群落)

ヨモギオーダー
 カワラパハコーヨモギ群団
 マルパヤハズソウーカワラノギク群集(標徴種:カワラノギク分布:関東、中部)(図6)
 カワラヨモギーカワラサイコ群集(標徴種:カワラサイコ分布:東北〜九州)
 カラメドハギーカワラケツメイ群集(標徴種:カラメドハギ、カワラケツメイ、カタバエノコロ分布:東北〜九州)

10)水際の多年生広葉草本植物群落

 日本の、とくに西南日本の雨量の季節的変化をみると、6月の梅雨と9月の台風の時期に雨量のピークがある。またこれとは逆に、盛夏の8月と冬季には雨量が少なく、川の流量が極端に低下する。6月の増水は、河原には生育する植物の生活に強い影響を与えるが、この時期はちょうど越年生植物や冬緑植物はすでに結実を終えている。また、台風の時期は毎年かならずしも一定してはないが、襲来の頻度の高い10月頃には春に芽生え夏に成長した植物が一応の生育をとげることができる。したがって日本の河原に生育する植物の多くは、降雨の季節的サイクルにうまく適応して生活しているということができる。

 

 

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