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 渓流の流水中の植物群落には冷温帯にセキショウモースギナモ群集が知られている。ほかにバイカモ属が冷温帯に特徴的に分布している。また、九州南部に分布し、渓流中の岩礫上に生育するカワゴケソウ科植物の群落は、すべて絶滅を危惧される種で構成され、その保全に注意が払われる必要がある。
 浮葉植物、沈水植物の群落は、以下のように、世界に共通するヒルムシロクラスにまとめられる。

ヒルムシロクラス(浮葉沈水植物群落)

ヒルムシロオーダー
 ヒルムシロ群団
 ガガブターヒシ群集(標徴種:ガガブタ、アサザ分布:北海道〜九州)
 セキショウモースギナモ群集(標徴種:スギナモ分布:北海道〜中部)
 ヒツジグサ群団
 ホソバタマミクリーオゼコウホネ群集(標徴種:ホソバタマミクリ、オゼコウホネ分布:北海道〜中部)
 ジュンサイーヒッジグサ群集(標徴種:ジュンサイ、ヒツジグサ分布:北海道〜九州)

コウキクサクラス(浮葉植物群落)

コウキクサオーダー
 アオウキクサ群団
 アオウキクサータヌキモ群集(標徴種:タヌキモ分布:北海道〜中部)
 アオウキクサーサンショウモ群集(標徴種:サンショウモ分布:東北〜九州)
 ヒメウキクサ群集(標徴種:ヒメウキクサ分布:関東、九州)
 オオアカウキクサ群集(標徴種:オオアカウキクサ分布:東北〜九州)
 ボタンウキクサーアカウキクサ群集(標徴種:ボタンウキクサ、アカウキクサ分布:九州、沖縄)

9)礫地の草本植物群落

 河床礫地の草本植物群集は河川の中流域の扇状地で、洪水後形成された礫地において、先駆的に生育する植物で構成される。円礫の多い河床部や高水敷は比較的水面から高い位置にあるため土壌は保水力が弱く、常に乾燥し、また季節による乾湿の差も激しい。
 礫質の河原では、植物は盛夏の極端な高温と極端な乾燥に抗し、さらに時には数日間の湛水にも耐えなければならない。これに対し、河原の植物は深い根、地表に接した葉、毛で覆われた分裂葉などをもつことによって適応する。日本各地の河川でみることができるカワラパハコの場合がその

 

 

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