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一般的な特徴を述べる。

1)河辺林

 疎らな草原植生で被われる不安定な河川敷において、安定化がすすむとしばしばヤナギ科植物による低木林や高木林が形成される。河辺生のヤナギ科植物の特性には多くの共通点がある。ヤナギ科植物はすべての雌雄異株であるが、雌株につく種子は綿毛をそなえており、風で広範囲に散布される。したがって、広域的な分布を示す種が多い。しかし、その発芽能力の期間は1ヵ月以内と極端に短く、しかも落下した場所が適当に湿った裸地でないと種子は発芽することができない。
 日本の低地における河川敷で、河辺林を構成する樹種は主にヤナギ属植物である。河辺生のヤナギ群落には相観的にみて、低木性と高木性のものがある。一般にヤナギ群落では草本層の植物は洪水の度に撹乱を受けるため、その種組成は必ずしも一定しない。したがって、種組成に基づく群落単位を扱う場合、上層を構成する種に重点が置かれる。なお、同じヤナギ科であるが、属レベルで異なるケショウヤナギ属、オオバヤナギ属、ドロノキ属の種も本州の亜高山帯や北海道の針葉樹林域にまで分布域を広げ、高木性の河辺林を形成している。
 高木林であるジャヤナギーアカメヤナギ群集はアカメヤナギが優占し、ジャヤナギ、カワヤナギ、オオタチヤナギ、さらに、四国地方ではヨシノヤナギが混生する。本群集は東北南部から九州にかけて常緑広葉樹林域に分布し、大河川の下流域で、安定地や後背地の適潤地に成立する。コゴメヤナギ群集はコゴメヤナギが高木層に優占して広い林冠を構成する。本群集は、太平洋側山地の寡雪地に分布し、中部地方の富士川、天竜川などの中下流域に多い。その生育地は砂礫質の河床部で、洪水時に撹乱される。シロヤナギ群集の分布はこれとは対照的に日本海側の山地帯で、信濃川中流部、最上川などにまとまった林分が多い。シロヤナギ群集はシロヤナギが高木層に優占し、発達した林分では林床の被度は高い。エゾノキヌヤナギーオノエヤナギ群集はオノエヤナギとエジキヌヤナギが混生する高木林で、北海道全域に分布し、林床に高茎の草本植物が多い。亜高山帯に分布する高木ヤナギ林にはオオバヤナギードロノキ群集があり、北海道から本州の中部地方にかけて、源流域の不安定地に先駆的な森林を形成する。
 低木林の代表的な群落であるタチヤナギ群集は、タチヤナギが優占するほか、イヌコリヤナギ、カワヤナギ、オノエヤナギが少数混生し、草本層には禾本、広葉の草本植物を主体に、つる性、葡匐性など多様な生育型の植物が混生する。生育立地は河川下流域の微砂をまじえた粘質土壌の堆積した立地で、洪水で林床はしばしば冠水し、泥土が堆積する。イヌコリヤナギ群集はイヌコリヤナギが優占し、草本層にイヌドクサ、イタドリなどが生育し、河川の中流部に多く見い出され、礫と粗砂からなる乾性な土壌条件の場所を占める。ネコヤナギ群集は河川上流域の大礫から粗礫が混在

 

 

 

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