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付近では、スゲ類群落の背後にヌマガヤ草原やミズゴケ湿原が加わる。水位変動の激しい貯水ダムやため池などでは水際が裸地になりやすく、不安定河川の水際とよく似た1年生ないし多年生の草木植物群落が出現する。
 日本の河辺や湖沼周辺の主要な群落は、日本固有の種を中心に構成されるが、北半球では属以上の共通の分類群を持ち、基本的にはきわめてよく対応している。

3 河川水辺の植物群落

 日本の水辺に生育する植物群落はきわめて多い。河辺の植物群落は、これまで述べたように、河川敷にあって、冠水の影響程度に対応して一年生草本植物群落から夏緑広葉樹高木林まで多様な群落を包含する。関東地方低地の沖積地に限定しても、64の植物群落が記載されている。
 低湿地の植物社会学的研究は、河川、小川、渓流、池塘、沼沢、湿原、塩沼地など、多様な水辺環境における植生を対象に、過去およそ30年間にわたり、日本列島全域で続けられている。さらに、河川ごとの地域植生誌の研究もしだいに明らかにされている。また、水辺環境における緑地の修復や、生態学的生物生息空間(ビオトープ)の形成などの応用的研究も進められている。
 建設省河川局が平成2年度から全国109の一級河川を対象に行った「河川水辺の国勢調査」による成果は平成4年度までの3年間のものであるが、その中で植物群落数は約400ときわめて多い。これは、調査者において、あらかじめ群落単位を決定するための基準が一定していなかったためである。調査結果を相互に比較するためにも、同じ観点からの群落単位の把握とデータベース化が今後の課題である。
 日本の河川敷の自然植生の植物社会学的群落単位の数はおよそ80と考えられる。それらの所属クラスの総数は20程度に達する。
 河川敷における群落の記載とその体系はほぼ明らかにされているが渓流域や池沼周辺などではまだ未解決の点が残されている。河川敷におけるクラス単位の植生分布を中流域で示すと、一般的に水際からアゼナ群団、タウコキクラス、カモジグサー一ギシギシ群団(オオバコクラス)、ヨモギクラス、オニシモツケーオオヨモギクラス、ススキクラス、セリーグサヨシ群団とオキーヨシ群団(ヨシクラス)、イノバラクラス、オノエヤナギクラス、ハンノキクラス、エノキームクノキ群団(ブナクラス)などとなる。また、上流域の渓流辺ではヌマハコペータネツケバナクラスやカワゴケソウクラスが加わる。
 河川下流域の広い河川敷では、中州などに小池が形成されるため、ヒルムシロクラスやコウキクサグラスなどの池沼植生が出現する。また、河口付近では砂丘植生(ハマボウフウクラス)や塩沼械生(ウラギククラスなど)も断片的であるが存在する。
 これらのなかで河辺や湖沼を含む沖積地に生育する植物社会的群落単位について、生育環境別に

 

 

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