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 表4にあげた種は国レベルで保護を要するとされた種であるが、地方レベルで保護を要する植物も多い。すでに近畿地方、神奈川県、三重県、兵庫県などで地方版のレッドデータブック、もしくはそれに相当する報告書が刊行されているし、いくつかの地方自治体で刊行準備中である。
 近畿版のレッドデータブックには保護上重要な種として862種類がリストされているが、そのうち河川にかかわりのある植物としては、水域の種が56種、富栄養湿地の種が69種、原野の種が28種、河原の種が5種(いずれも他の生育環境と重複を含む)あげられている。このうち、河原の5種は、カワラハハコ、ハマウツボ、イヌハギ、カワラサイコ、ヒロードテンツキだがこれらはいずれも全国版にはとりあげられていない。ハマウツボやビロードテンツキはふつう海浜に分布する種であるが、近畿では一部の河川の中流域の砂の河原にも分布する。これが近畿地方のフロラの個性であり保護に値する特徴である。
 こうした特徴は近畿に限らず、他の地方にも存在する。これらが地方レベルで保護できてこそ、植物相の多様性が保全できるといえる。

 2)保護の考え方

 近年の環境問題に対する意識の高まりにつれ、保護上重要な種についても、従来よりはるかに関心がもたれるようになってきた。とくに河川改修など、公共事業の実施にあたっては、いわゆる貴重種の保護にも一定の配慮がなされるようになったのは喜ばしい。しかし、具体的な保護策として評価できる事例は少ない。ここでは種の保護のための原則を述べる。

(1)種を保護する意義

 なぜ、絶滅に瀕する植物の保護が必要かについては、全国版のレッドデータブックやその普及版に、次の5項目があげられている。
(1)遺伝子資源としての評価
(2)生物群衆の安定性の保護
(3)教育・研究素材としての価値
(4)文化財としての評価
(5)自然に対する人間の倫理
また、近畿版には上記5項目に加え、地方レベルで保護を考える場合の視点として、
(1)歴史の証人としての生物種
(2)環境の象徴としての植物種
の2項目があげられている。

 

 

 

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