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れると考えられる。絶滅危慎種の絶滅を防ぐこと自体が地域の生物多様性の保全に寄与することになるが、同時に、その自生地に共存する多くの生物の生育条件が確保されるという意義も大きい。

(2)保謹上重要な種のリスト

 日本における保護上重要な植物としてレッドデータブックにリストされた895種のうち、主に河川沿いに生えた種を表4にあげ、それぞれの河川でのミクロな生育環境を示した。ただし、川との結びつきの程度は種によって違う。例えば、ツクシガヤは山形県以外では河川より低地の水路や湿地に生える。シランは増水時には冠水する渓谷の岩場に生えることが多いが、土地的に森林の発達が妨げられる草地にも生える。ヒメコウホネは河川より池沼に生えることが多い。ノカラマツは関東では河川沿いに生えるが、関西では山の草地に生える。オオアブノメは水田や湿地に生えることが多いが、長良川では河川敷にできた水たまりに生えていた。このように、ここにあげた種以外にも河川と結びつきの強い種があるはずであるが、種別の生育環境に関する情報はまだ十分には整理されていない。例えば、北海道におけるカラフトモメンヅルの生育環境が砂礫の河原だと報告されたのは、ごく最近のことである。
 表4にあげた種には、河川の源流域の渓流沿いに生えた種が多い。とくに、本州中南部から南西諸島の渓流沿い植物が目立つ。ここには比較的狭義の河川の水辺の植物をとりあげたが、主に池沼や湿地に生える種が河川沿いに生えることも多い。渓谷の沢沿いの湿地、池沼、河川、湿原や水田など、すべての水湿地をウェットランドとして一括すれば、該当種はより多くなる。

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