日本財団 図書館


和市田鵬ヶ原のサクラソウ自生地も代表的な原野である。一般にはサクラソウだけが注目されるが、シムラニンジンなど、めだたないが保護上重要な種の生育も知られている。
 近畿では琵琶湖・淀川水系に原野が集中しており、そこにはトネバナヤスリ、ホソハイラクサ、ホソハイヌタデ、ヤナギヌカボ、ノウルシ、タコノアシ、オオマルバノボロシ、ミゾコウジュ、ヤガミスゲ、ミコシガヤなど、全国または近畿地方レベルで保護上重要な原野の植物が集中して分布すると報告されている。図3はオオマルバノボロシ、図4はミゾコウジュの近畿地方での分布図である。いずれも分布が琵琶湖や大きな河川沿いに偏っていることがみてとれる。

 ここで原野の植物として一括した植物は、生育型も生育立地も一様でない。トネバナヤスリ・ノウルシは典型的な春植物で、春先、いち早く成長し、優占種となるヨシやオギが伸びきる夏前に生活環を完結させる。これに対し、他の種類はヨシやオギの群落の縁、優占種の密度が低く、やや疎開した群落内、もしくは群落が破壊された後にできた裸地に近い場所など、一見、荒れた印象を受ける環境に生える。前二者が河辺では比較的安定した環境に生育する種とすれば、後者は撹乱を受ける不安定な環境に依存しているようにみえる。
 上・中流域同様、下流域の原野にも増水のたびに流水によって新しいオープンランドができる。そうした立地を生活の場としているが原野の植物である。

2 河川の植物の保護

 河川沿いの土地の肥沃なため、古くから拓け、人口が集中した、今日、日本の大都市のほとんどが、平野部を流れる大河沿いに分布するといってよい。土地の需要が多く、地価も高い都市では、

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION