
ミカミノショウジョウスゲの紀伊半島での生育地は渓流沿いである。
(2)九石河原の植物
河川の中流域の特徴的な景観の一つに砂礫堆、丸石河原がある。角はとているが大きな石、円礫がごろごろした河原のことである。こうした河原は増水時はともかく、日常的には乾燥した砂漠のような環土童である。もともとあまりたくさんの植物が生えておらず、植物よりも石のほうがはるかに]立つ。 丸石河原の群落の優占種はカラパハコやカワラヨモギであることが多いが、優占種以外にも丸石河原に固有、もしくは多い在来種がある。代表例を表3にあげる。
丸石河原は中流域で、洪水による植生と立地の破壊が繰り返されることによって持続的となる環塒である。丸石河原に特徴的な植物のうち、カワラノギクの生活史はカワラノギクが絶滅が危慣されるほど減少したこともあって、以下のように詳しく調べられている。 カワラノギクは可変性2年草で、次のような一生を送る。まず、冬に散布された種子は春に発芽する。その後、1年に数cmずつ伸び、冬は伸びた地上茎の上に葉をつけたまま越す。数年後、夏に花茎を仲はして秋に開花・結実したのち枯死する(図2)。 開花特性はほとんどの可変性2年草でロゼットの大きさと関連し、明瞭な臨界サイズが存在する、すなわち一一定の大きさと達した個体が開花するのに、例外的に明瞭な臨界サイズをもたないようである。これは、河原では増水による撹乱が不定期に起こることと関連しているらしいと考えられている。確子生産に関して、洪水の間隔が短いときに小さなまま開花する個体が、間隔が長いときには大きくなってから花をつける個体が有利なので、開花の臨界サイズに関するこの特性は・不定期な洪水による撹乱にさらされる丸石河原に依存的なカワラノギクにとって、有利な性質と考えられる。また、開花に至までの閻、ある程度の高さの地上茎の上にロゼット葉がっく形態は、渇水の夏季に熱せられた丸石に葉が直接触れにくいという点で適応的と考えられる。
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