
水による立地の撹乱の頻度が高く、最近では土壌がかなり富栄養化していることなど、帰化植物の生育に適した条件が揃っていることが理由と考えられる。また、大都市近くの河川はど帰化率が高いのは、都市周辺にはすでに種子給源としての帰化植物群落がふんだんにあるためと考えられる。 しかし、在来植物にとって、環境が不適になったから帰化植物がかわって侵入したとは考えにくい例もある。例えば、河川中流の代表的な植物群落のカワラパハコ群漸こは、近年、ムシトリナデシコが帰化し、初夏には河川敷をピンクに染める。カワラパハコ群落は玉石河原とよばれる環境に特徴的な群落だが、もともと密生した群落を形成せず、カワラヨモギ、カワラパハコ、マルパヤハズソウ、カワラナデシコなどが疎生する。見かけは裸地的で、植物の生育余地は大きいようにみえる。ムシトリナデシコは地中海地方のシリカの多い乾性な草原を原産地とする種だが、日本では玉石河原にうまく入り込んだ、つまり本来の住処に近似の環境を見つけだしたようにみえる。また、カワラパハコ群落の多くの種が秋に開花するのに対し、いち早く初夏に開花するから、ポリネータ(花粉の媒介生物)の競合もない。あまり在来種を圧迫しているようにはみえないのだが、本当のところはよくわからない。 帰化植物が嫌われるのは大型で一面に優占する種が多いこと、慣れ親しんだ在来の植物と異質な形態や花色をもつことなどが理由であろう。一般に、在来種が衰退して帰化種が増加する原因に、在来種と帰化種の競争を考えがちである。しかし、植物の場合、同一の資源を奪いあうという意味での実際の競争はほとんど起こっていないようである。むしろ、在来種の生育に不適当な環境を人間がつくりだし、帰化種しか生育できない環境となったと考えるのが妥当である。
4)河川に固有な在来種
河川の植物のうち、群落の優占種ほど目立たないが、その分布が河辺に限られる在来の植物がある。群落の優占種同様、そうした種類は中・上流域に多い。これらは日本の河川の代表というべき種類で、地域的な固有種も多い。ここではそれらを紹介する。
(1)渓流沿い植物
河川の上流は流速も速く、河川の幅も狭いため、わずかな降雨でも短期間に水位が上昇する。こうした環境に生育する植物は頻繁に冠水するばかりでなく、水流の圧力や土粒子によって、相当に大きな機械的撹乱を受ける。このような環境は通常の陸上植物にとってはもちろんのこと、静水に生育する水生植物にとっても生育に適した環境とはいえない。 ところが、こうした厳しい環境に適応した植物群があり、渓流沿い植物(rheophyte)と呼ばれている。渓流沿い植物は増水時の上限水位と減水時の下限水位の間に生育するというだけでなく、そうした環境に適応した形態をそなえていることによっても、他の植物と区別できる。渓流沿い植物
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