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 以上のように、河川に多い植物のうち、ヨシを代表とする下流域の優占種は、その分布が必ずしも河辺に限られるわけではない。これに対し、中・上流域の優占種は、ほぼ河川に特有な種類が多い。これは河辺の特徴である流水によって撹乱され、立地がつくりかえられるという現象が、中・上流域でより頻繁に起こっていることと関係していると考えられる。

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3)帰化植物

 2)では在来種の群落に限って話をすすめたが、河辺には帰化植物の種類も優占群落も多い。ほとんど帰化植物ばかりといってよいほどの河川もある。もともと河川は増水による撹乱が頻繁に起こる場である。撹乱が日常化している立地では、生活環の短い草本植物、とくに短年生草本植物が優勢になる。
 最近では自然の撹乱に人為的な撹乱が加わり、不安定傾向をより強めている。結果として河川は短年生の種類が多い帰化植物の天下となり、種類によっては大群落を形成することもある。大群落の優占種となっている帰化植物には、キシュウスズメノヒエ、アレチウリ、セイコウカラシナ、セイタカアワダチソウ、クワモドキ(オオブタクサ)、キクイモ、イヌキタイモなどがあり、最近、近畿地方ではオオカワヂシャやチクゴスズメイヒエが急速に分布域を広げている。
 優占して大群落とならないまでも、帰化植物は今では河辺の植物群落の普通の構成種となっている。多摩川、淀川などの河辺植生の調査結果に基づいて計算された群落別の帰化率をみると、セイタカアワダチソウ、オオオナモミ、オオブタクサ群落など、帰化種の優占群落で30〜40%と高率であるばかりか、ヨシ、オギ、カワラサイコ群落など、在来の植物群落でも20〜30%にも及ぶ。調査されたのは都市内を貫流する河川が多かったことも、高い帰化率に影響していると考えられるが、地方の中小河川でも、その地域では帰化植物の中心的生育地となっているようだ。地域の帰化率は、(1)帰化植物にとっての環境の好適度、(2)在来植物にとっての環境の不適度、(3)帰化植物の侵入機会の3つのパラメータによって決まる。河辺に帰化植物が多いのは、増水時の冠

 

 

 

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