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 発進する。こうした州は増水時には冠水するが、平時は極端に乾燥する。ヤナギ類や多年生草本の優占群落が中流域の主役だが、上流域と同様、わずかな立地の違いに応じて優占種は異なる。
 流れのある水辺で、湿った砂礫の堆積地には、1年生草本のヤナギタデの優占群落が特徴的にできる。この群落の立地は増水で毎年のようにリフレッシュされる。多年草ではツルヨシがこうした立地で優占する。
 ある程度水面から高く、平時は乾いた円礫の河原には、密な植被の群落はできず、カワラパハコ、カワラヨモギなどがパッチ状に優占する。時にススキが優先することもあるが、密な植被の草原となることは稀である。
 水面からの高さはあるが、適当に湿った砂土の堆積地には、オギの優占群落ができる。礫の河原と異なり、大面積の群落を形成することも多い。

(3)下流域

 下流域では川幅がより広くなり、流れは緩やかになって土砂の堆積作用が卓越する。草本群落が優勢で、セイタカヨシ、ヨシ、マコモ、ガマ類、ウギヤガラといった大型の多年生草本が水温に恵まれる細砂、泥質の立地で優占する。停滞水域にはマルパ(アカメ)ヤナギやハンノキの優占する林ができる。
 河床の流水辺には短年生の草本による群落も形成される。大型の多年草の群落より流水による撹乱を受けやすい立地に発達するが、ミゾソバ、アキノウナギツカミといったタデ属の種の優占群落がよく目立つ。
 図1は琵琶湖岸で優占種となるヒメガマ、マコモ、ウギヤガラ・オギ・ヨシの分布をライン.トランセクト法で調べ、立地の水面からの比高と泥の堆積厚の2つの環境軸平面に優占範囲を展開した結集を模式的に示したものである。ヒメガマは最も水温に恵まれる泥質の立地、マコモはヒメガマほどではないが水温に恵まれる泥質の立地、ウギヤガラは泥質だがやや乾き気味の立地・オギは乾いた砂質の立地でそれぞれ優占し、ヨシは前記4種が優占できない隙間を埋めるようなかたちで優占することがわかる。
 下流域の優占種は池辺、湿地などと共通である。一般にヨシは川の植物の代表のようにいわれるが、ヨシの広い優占群落ができるのは沖積低地を流れる大きな川の下流部で、感潮域がほとんどである。中流域の河川敷に大きなヨシ原ができる例は稀で、ヨシ原のできる河川敷は凹地、後背湿地といった地形構造をもっている。
 海にそそぐ川の河口域が、塩沼地または砂浜になっている場合がある。ここではシオクグ・フクド、アイアシなど、海岸の塩沼地に特有な植物が優占したり、コウボウムギ・ハマヒルガオなど・海浜の種が優占することもあるが、ここでは扱わないことにする。

 

 

 

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