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ならば許されているが、一般の住宅地や商業用地としての開発は許可されてない。さらに、環境保全、経済、景観、歴史的価値、洪水防止機能、レクレーション、水質などを総合的に検討し、開発、計画が公共の利益に貢献すること“Public Interest Review”が必要となっている。
 ミティゲーションが計画通り実施されたとしても、従来の自然の生態系が維持されているのか、あるいは整備された生態系が十分に機能していくのかといった点は、まだ今後に残された問題でもある。生態系を理解したコンサルタント、土木関係者や造園関係者による細心かつ最大の努力にもかかわらず、先進国アメリカでも失敗した事例は少なくない。また、代償措置をしたくても近隣地に場所が確保できない場合、ミティゲーション・バック、補償金等の搬出によって代替されることも一定の基準で可能となっている。

ミティゲーション導入に向けて

ミティゲーションのメリット

 現在実施されている環境アセスメント制度に加えて、ミティゲーションを導入することによる生態学的あるいは環境保全・自然保護的視点からのメリットは、以下の点を当初的に期待できる。
 (1)経済的な利益・価値を直接生まないという理由のために自然が「資源」としては必ずしも価値が評価されてこなかった。資源としての正当な価値判断なしに、結論でもある保護と破壊という二者択一の選択が求められている現況に対して、ミティゲーションの考え方では、生態系にとって望ましい配慮・現実的対応(保護・保全から代償まで)が可能となる。多くの場合、制度の導入によって、相対的に生態系・環境の保護・保全が図れる。相対的に生態系保全が図られる計画では妥協的・消極的との批判もあろうが、実質的に開発が優先され自然保護が軽視されてきている現状と比較すれば、かなりの前身になる。
 (2)地球的レベルで自然環境が劣化している一方で、先進諸国では文化的・人間的視点から、生き物としての人間が精神的安堵と開放を体験できる休息の空間(山、海辺、川沿いの自然、緑豊かな公園など)の価値(役割)が一段と高く評価されてきている。アメリカのNO−NET−LOSSの考え方を尊重すれば、失われる以上に広い面積の生態系の創造を求めることができ、結果的に人間が日常的あるいは週末などに訪れることのできる自然・休息空間をより多く確保できる。我々にとって文化的あるいは人間的にも価値のある自然環境の増加につながる。
 (3)ビオトープ・多自然型川づくりなど、自然環境・生態系の創造・修復の技術が開発される。このことは、生態学者・エコロジスト(自然愛好者)・生態系を扱うコンサルタントなどの会社的役割が増加することも意味する。ミティゲーションは、自然環境の修復・環境創造と

 

 

 

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