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ミティゲーションの対象

 これまで述べてきたミティゲーションは、湿地や干潟など豊かな生物相あるいは貴重な生態系の保全を中心に 論じられている。しかし、アメリカにおいては、「連邦事業の環境アセスメントは、自然資源だけではなく、都市環境、歴史的、 文化的資源への影響を記述すること」(NEPA)としており、ミティゲーションの概念が要求される環境要素として以下の 3要素を規定している。

 

 (1)生物的環境;希少な・貴重な動植物の保護
 (2)大気、水質、沿岸域、景観の優れた河川等、地域環境資源の保全
 (3)有害廃棄物の処理、農薬の管理と使用、鉱物の採掘等、発生場所によらず人間の活動を管理することによる環境の保全

 大気汚染防止法や水質保全法によって大気や水質の保全基準を求める (3)を対象としたミティゲーションは、生態系の保全とは別の視点からの対応が行われてきている。 また、すでに、わが国でも(3)は環境アセスメント制度以外の諸法律によって実施されており、 ここでは取り上げないことにしたい。アメリカで実施されているミティゲーションとして特に注目され、 事例も多数あげられるのは(1)と(2)にかかわる水域、湿地などの自然生態系である。 また、アメリカの高速道路関係では、ミティゲーションが行われてから5年以上経過したものだけでも数百件に達している。

湿地保全とミティゲーション

 過去200年の間にアメリカは湿地の半分を開発によって失っている。 湿地生態系が地球環境の形成と保全に果たしてきた役割の重要性への認識とその劣化の大きさとから広大な国土をもつ アメリカにおいても生物資源の宝庫となっている干潟・湿地・沿岸域を対象とした生態系の保全に関心が 高まっている。
 実際にミティゲーションを有名にしたのは、カリフォルニア州サンフランシスコ 湾環境保全開発委員会BCDCの活動である。サンフランシスコ湾計画では、目標を(1)現在および将来の世代の人々 のために湾の自然資源を保全する、(2)湾の埋立を最小限に限った上で、湾と沿岸域を最大限に発腱させるとしており、 湾の資源に不可避な環境影響が予測される場合にミティゲーション計画を策定させている。 そして、その為の『ミディゲーションガイドブック』も発行されている。BCDCは、河川、水路、堤外地の土地利用を管轄し、 俊楳、埋立てなどの許認可権をもっており、1974年から1988年までに湿地・干潟のミティゲーションをすることで 68件の埋立許可を出している。
 水域や湿地に係わる開発は、水系に近接していることが必須な事業(例えばヨットハーバーなど)

 

 

 

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