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予定地内のある地点に破壊せざる得ない湿地や貴重な生態系がある時に、現存する生態系と隣接した場所に新しく湿地生態系を整備することなどが実際に行われている。しかし、ディベロッパーが5種類あるミティゲーションの措置を自由に選べるわけではなく、優先順位は、(1)>(2)>(3)>(4)>(5)となっている。特に生態系への影響を他の場所に生態系を整備することよって置き代える代償措置(5)については、他の手法を行ってもまだ重大な影響が起きる可能性が予測される場合にはじめて認められるものとされている。
 1992年のNRC(National Research Council)のレポート;Restoration of Aquatic Ecosystems;Seience、Technology、and Pulic Policyでは、生態的価値と人間的価値とのマトリックスによってミティゲーションのあり方を論じている(図1)。リポートでは、開発・利用に対する評価には許容できる限界と望ましい限界2つの限界があるとしている。開発による人間的価値は、利用価値・経済的利潤として評価できる3階段(0、1、2)があり、許容できる段階1からより望ましい段階2への追求がなされる。一方、生態系や環境を保護・保全する視点からの生態的価値も3段階の評価(A、B、C)がなされ、開発行為に対して許容限界までの生態的価値(AまたはB)の価値改変なら許可される。しかし、実際には、開発行為に対して生態的価値の減少を望ましい限界に抑えるための行為(B→C)すなわちミティゲーションを求めている。
 また、ドイツ・バイエルン州のミティゲーションでは、道路計画に対して、(1)回避Vemeidung、(2)補償 Ausgleichung、(3)代替 Ersatzの3種の措置をとる「貴重な自然保全の原則」が実施されている(桜井、1993)。オランダやイギリスなどでも、採用可能な代替案をも含めて、開発に対する環境保全をチェックする方法が取られている。

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