- 総額522億ドル(約800億)の援助を実行した。これを受けてロシアは、条約通り1994年6月30日までに、1日東独から部隊を撤収し、ドイツの再統一並びに完全なる主権回復を可能にした。世界のどの国と言えども、これほど多額の財政援助をロシアに与えてはいない。ドイツは今も、ロシアの多額の債務返済猶予を続けている。
- 一 ロシアの政治的、経済的改革プロセスが民主主義と市場経済の方向へ前進すること。
- 一 NATOの東方拡大により、安全保障政策上、ロシアと特別の関係が構築されること。ヨーロッパに於ける平和は、長期的にはロシアを組み入れることによってのみ可能であり、それなしには不可能である。
- 一 ロシアの民需転換が進むこと、ドイツはこれを支援している。
- 一 欧州経済圏との関係が緊密化すること。
- 一 ロシアのドイツ人問題の解決。ドイツ人がロシアで少数民族として差別されてはならないし、彼等にアイデンティティーを維持する可能性が与えられなければならない。連邦政府は1991年/92年に設立された西シベリアの「ドイツ人地区」と、ロシア、カザフスタン国境周辺の地域に、かなりの資金を投じて振興を図っている。
- 一 多国間レベル(G7,OSCE,OECDなど)への民主ロシアの参加を支援すること。ある意味で、ドイツはここでロシア側からも望まれている政治上の教師役を担っている。
2. ロシアに対するドイツの経済面での関心は、外交面での関心と密接に結びついている。具体的には、経済面での主要な関心は次のような領域にある。
- 一 ロシア経済の改革に伴う危機の克服。改革は迅速、かつ集中的に行われなければならず、経済の凋落傾向が止り、明らかな景気回復へと転じなければならない。
- 一 ロシア市場をドイツ経済のために一層解放すべきである。旧東独地域のドイツ企業は、旧コメコン時代の関係を利用し、東部ドイツの経済再建の推進を支えることができる。但し、現時点から見れば、ロシアがドイツの高品質製品を、望まれるように一般的に販売できる市場になるのは、まだ大分先であることは補足しておかねばならない。しかし、それを視野に入れた投資的、戦略的決定は、現時点でなされねばならない。乃至は、なされていなければならなかった。ロシア国民一般の購買力の伸びは、経済改革の進展と密接に関連している。
- 一 ロシアは中期的に、ドイツ経済にとってコスト面で有利な生産拠点へと発展する可能性がある。こうした方面での投資阻害要因(不透明な税制・銀行制度、法適用の不安定、官僚主義、道徳に欠ける支払い慣行、買収、マフィア)を、ロシア側が取り除く必要がある。