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一 ドイツはロシアから多量のエネルギー(ガス及び石油)と資源の供給を受けている。エネルギー供給を確保、拡大しなければならない。

一 ドイツはロシアにとって、最も安定した、最大の貿易パートナーである。しかし、望まれた貿易拡大は、今のところ現実となってはいない。2国間の貿易取引額は1995年に299億マルクで、前年をO.2%下回った。この傾向は1996年の第1四半期も続き、4.3%の後退となった。ロシアからの輸入が9.7%減少する一方、ドイツからの輸出は久しぶりに4.1%増加した。とは言え、ロシアの輸出は1996年の第1四半期に8億3800万マルク輸入を上回り、ロシアの輸出超過であった。この点、24億マルク、33億マルクのロシア側輸出超過であった1994年と1995年の傾向は変わらなかったようである。従って、経済関係の緊密化の条件は、現在有利とは言えない。

一 対ロシア投資に対する外国企業のためらいを克服しなければならない。こうした態度は、ロシアの経済、政治情勢の分析に依然として確信を持てないところから来ている。こうした態度は、ロシア市場を知っていて、大きな期待を抱いているドイッ企業にも見られることが特筆される。確かに、好ましい方向性は見えている。ドイツの対口直接投資は1992年に僅か800万マルクであったものが、1993年には2900万マルク、1994年には1億3800万マルクにまで増加した。しかし、1995年には1億1500万マルクヘと減少した。ドイツ政府はドイツからの投資に対して、1995年末までにおよそ2億6000マルクの保証を与えた。

一 55万のロシア兵とその家族がドイツから去るに当たって、ドイツ側はロシア、ウクライナ、ベラルーシで4万3500戸の住宅建設の資金を提供した。1996年9月にこの事業は終了している。退役した士官等に、技術、商業分野への職業転換教育を実施するために、ドイツ政府は1億2500万マルクの資金援助を約束した。ドイツの建設企業は今後共、ロシア市場に於いて自由競争の下で活動をすべきである。

III. まとめ

ロシアに関する私の考え方を次のようにまとめたい。ロシアは全体主義から民主主義へ、また統制経済から市場経済への移行に於いて、この7年間に非常に重要な前進をなし、また後退も経験した。ロシア大統領は自らが制定した大統領憲法に従って行動しているが、この憲法の認める司法・立法・行政間の権力分散と均衡は限定的、かつアンバランスである。しかし、権力は大統領に極端に集中しているとは言え、新しいロシア憲法は少なくとも民主的な権力均衡への視点を合んでおり、あるいは将来バランスの取れた権力分散へと改正される可能性を持っている。ロシアは今日まだ民主主義国家ではないが、概ね民主主

 

 

 

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