レベジ将軍は選挙直後、エリツィン大統領により安全保障会議書記に任命され、チェチェン戦争の終結を最大の課題とした。レベジ将軍は休みない大活躍で休戦協定、そして間もなく部隊撤収の協定を結ぶことに成功した。チェチェンの政治的独立問題は5年後に決定されることになり、ロシア軍は既にチェチェンから撤退している。レベジ将軍は不可能と考えられていたチェチェンとの和平を実現した。そのことでレベジ将軍は、エリツィン大統領の後継者ナンバーワンの地位に上ってきた。1996年末、エリツィン大統領の心臓病と、後継者と見られる者達のランク付けや、レベジ将軍の大統領職への意欲発言などがモスクワに混乱をもたらし、1996年10月、レベジ将軍の安全保障会議書記解任へといたった。
エリツィン大統領は1996年11月の心臓手術と、97年1月に続いた肺の重い感染症により、数カ月にわたり執務不能となった。チェルノムイルジン首相は、エリツィン大統領が病気の期間中の「コーディネーター」に指名したチュバイス大統領府長官の了解の下に、職務を代行している。
大統領の病いのために、現在ロシアの将来に大きな疑問符が付いている。ロシア自身が「病める患者」であり、その回復は決断力ある、職務を遂行できる大統領がいて、初めてあり得るのである。
ロシアは現在、経済界の大物だけによって管理され、統治は行われていない。改革のプロセスは、1995年当時のように、また凍結状態である。内政、経済政策に於いて、明確な決定が焦眉の急である。ロシアには、民主主義、福祉と環境に配慮した市場経済、法治国家へ向けて再び国を指導する、力強い大統領が不在である。ロシアには政治指導部が欠けている。
II. ドイツのロシアに対する関心
ドイツは政治的、経済的観点からロシアに関心を抱いている。ドイツ再統一の「贈り物」をもたらした冷戦の終結は、ドイツ側から見れば、ロシアが短期間のうちに民主主義体制へ、法治国家へ、そして福祉と環境に配慮した市場経済へと変身して欲しいという、消えることのない願いを含んでいた。ドイツは、そのようなロシアがヨーロッパ全体の持統的な平和への保証であり、早晩、中・東欧の経済繁栄をもたらすと見ている。民主ロシアを欧州連合の発展に組み入れ、つなぎ止めることは、双方にとって有益であろうし、長期的な豊かさと安全をより確実にするであろう。
1. ロシアに対するドイツの外交面での関心は、主として次のような点にある。
- 一 ドイツ再統一に伴う交渉での対口財政援助の約束を実行すること。連邦政府は