中国:現状認識と展望
慶応義塾大学教授
小島 朋之
I. はじめに
中国が今後の東アジア地域の平和と安定にとって、きわめて重大な要因であることに異論はないであろう。クリントン大統領は、再選直後に訪問したオーストラリアにおいて、「これから50年後の世界の姿を決定する要因が5つあるとしよう。その一つは、中国が自国の大きさをどう規定するかにあることは間違いない」と語っている(1)。
異論があるとすれば、このファクターの影響力の程度と方向である。中国は朝鮮半島とともにこの地域にとって不安定要因なのか、安定要因なのか、論者によって見解は分かれている。いずれの見解も、部分的には正しいのであろう。しかし、東アジア地域における危機の構図を考えるときに重要なことは、中国の現状がいずれの側面も持ち合わせており、日本をふくめた関係諸国が安定的要因に向かうように中国を積極的に支援するとともに、不安定要因化する中国への対応を忘れないことであろう。
中国は東アジアにおいてはすでに日本と並ぶ経済大国であるだけでなく、世界最多の300万兵力を擁し、米口英仏とともに核クラブの一員であり、アジアで群を抜いた軍事大国でもある。いまでもすでに、東アジア地域の安定と発展に大きな影響力をもっ地域大国であるといってよい。
その中国が今後も経済発展を持統し、アメリカに並ぶ経済大国になっても、地域の安定と発展に自覚的に貢献する「責任ある大国(responsible power)」になれば、中国は不安定要因ではなくなる。しかし経済大国としてそれに見合った、あるいはそれ以上に軍事力を増強し、力を背景に地域に対する主導権の確立をめざす「覇権大国(hegemonic power)」になろうとするとき、中国は地域にとって最大の不安定要因にならざるをえない。また短期的な可能性は減ったとはいえ、中国が経済的な困難に陥り、讃?唇文紊寮?E?坩堕蠅眇執錣砲覆蝓∧??隆躓,防里靴燭箸?癲?羚颪賄譽▲献?楼茲砲箸辰討鷲坩堕衢廾?砲覆襦」
いずれにせよ、これからの東アジア地域は「中国問題」に否応無しに取り組まざるをえない。アジアの一員としての日本も同様である。今後の中国に対する支援にせよ、対応にせよ、その出発点は中国の現状分析を通じて、中国の将来について展望をもつことである。