II. 困難と問題の存続
1997年の『人民日報』元旦社説は96年を回顧して、2000年までの第9次5ヶ年計画と2010年までの長期発展綱要に向けて「好スタートを切り」、「喜ばしい成果をあげた」と語ってみせた(2)。
「喜ばしい成果」は、経済、政治、社会、外交いずれの面でもみられる。経済面からみれば、「快速成長」から「安定成長」への「軟着陸」は「基本的に完了した」といわれる。GDPの伸びは1992年、93年の13%台から96年は10%以下に抑制された。20%をはるかに超えた物価上昇率(小売物価上昇率)も急速に下がり、約6%に抑制された。政治面でも1989年6月の天安門事件以後に讃?燭砲茲辰童綏兌圓忙慳召気譴森沼?荏軆餤?蓮「7年の時間をかけて権力基盤を固め、97年秋に開かれる15回党大会では再選が確実視されている。社会面でも1978年以来の改革・開放の成果による国民の全体的な生活水準の向上が、国民の安定化指向を強めている。外交面でも、1995年6月の台湾の李登輝総統の訪米以来、「最悪」といわれた米中関係は96年11月の江沢民・クリントン会談によって、本格的な関係改善に向かいはじめている。
こうした「喜ばしい成果をあげた」にもかかわらず、『人民日報』の元旦社説は「心を一つに団結し」、「二つの大事のために良好な政治的、経済的、社会的な環境と条件をつくらなければならない」と強調する。なぜ、いまさらのごとく「良好な環境と条件」の確保が強調されなければならないのであろうか。その理由は、2月6日の春節(旧正月)祝貿会で李鵬総理が認めたように、「任務は重く」、「前進途上にはなお少なからぬ困難と問題がある」からである(3)。「困難と問題」に直面しながらも、1997年には「わが国の歴史発展においてきわめて重要な」「二つの大事」を迎えなければならない。一つが7月1日に「香港の主権を回復する」ことであり、いま一つが共産党第15回全国代表大会(15全大会)が開かれることである。
それゆえに『人民日報』社説は、とくに指導幹部に対して「大局を把握し、ますます奮闘し、心を一つ(同心同徳)にして、開拓前進すること」を指示するのである。この指示の中心は、「一心」、「同心」の確保である。「同心同徳」とは、「江沢民同志を核心とした党中央の周りに一層固く団結する」ことである。
III. 次の時代への過渡期:3つのシンボル
「困難と問題」は主として、いま中国がある種の過渡期に入っていることから来ているように思われる。中国はいますでに一つの時代が終わりを告げ、次の時代への過渡期がはじまっているのかもしれない。
過渡期を象徴するのは第一に、「讃?浸?紂廚?曚椽?瓩魴泙┐燭?蕕任△襦」1978