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 直接投資の急拡大が見られたポスト冷戦、ポストGATTのWTOレジームにあって、貿易そのものよりも、直接投資を国際的な経済のゲームの中で、いかに位置づけるかが重要な問題となっている・投資と貿易との関連性、投資の各国経済への影響などをどう受け止めるかが各国の重要課題になってきた。
 そうした中で、直接投資においても世界のメージャー・ファクターである日独が、この新しい構造問題をどうとらえるか、認識を共通にすることが望ましい。OECDのレベルでも他国間投資協定(MAI)について検討している。投資の保護のあり方、投資受け入れ国において加熱している投資誘致競争への対応、投資にからむ効果的な紛争処理のあり方一一など、検討すべきテーマは多い。



新しいポスト冷戦型の南北問題への対応

 冷戦が終焉してから、新しい形の南北問題が生まれつつある。あるいは、それは新しい貧困の問題といってもいい。この新しい貧困は、地域紛争の素地ともなるため、単に当事国の国内経済・政治問題というだけでなく、地域、更には世界全体の安全保障に係わる問題でもある。トッブレベルの援助国として日独の援助政策の戦略的な遂行と協調が、今後一層求められるだろう。
 冷戦終焉の皮肉がある。確かに、冷戦が終わると大国同志の熱い戦争の可能性は無くなった。しかし、地域紛争が多発している。同じ国の中での紛争も増えた。武力行使を合んだ紛争が冷戦後に約100件発生している。その多くは同じ国の中での紛争だった(Foreign Affairs,1996/97 Winter)。紛争の結果、難民が急増した。1991年には1700万人だった難民が5年後の1996年には約3000万人に増えた。難民問題の質的な変化もある。冷戦時代には「東」からの「政治的な迫害」を理由として「西」に流れてきた「個人」が問題の中心だった。しかし、冷戦終焉後は「政治的な迫害」以外の多様な理由によって南から北へと難民が流出するようになった。規模も人口の大移動といった形に変化した。古典的な「個人」という単位から「集団」としての難民現象へと変質した(毎日エコノミスト誌、1997年1月27日号、土岐論文)。
 紛争の背景に昔からのエスニシティの違い、文化や宗教の違いといった要因が多分に存在する。しかし、より根本的な要因として指摘しなければならないのは、貧困とその結果としての絶望状態である。
 冷戦終焉で東西対立は解消されたが、「東」の諸国の多くが「南」に転落した。その結果、南北問題は変質し、かつ一層深刻になったとみることもできる。それだけではない。まさに冷戦終焉の結果として、世界全体の公的援助(ODA)は減少しつつある。冷戦時代には東西両陣営ともイデオロギーの戦いにおける仲間を増やすために積極的な援助政策を展開した、だが、冷戦が終わり、そうした仲間の動因は不要となった。援助している国で

 

 

 

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