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はいわゆる援助疲れも生じた。冷戦終焉で多くの国が遠慮することなく援助予算を削りだしたのである。ロシアは援助する余力もなくなり、旧同盟国を次々に捨てた。
 援助のための公的資金に代わって世界経済を動かしだしたのが民間の直接投資である。世界的な「市場経済化ドミノ」のもと、各国が海外から民間の直接投資を誘致しようと競争しだした。だが、世界の資源配分が市場を通じた民間の資本移動で行われる世界は、強さと弱さをもつ。強さはアジア諸国の経済の大勃興となって現れ、弱さはアフリカ等一部地域の貧困の深刻化となって現れている。
 市場を通じた資源配分だと、主役が民間資本であるため、政治的に不安定な国、経済の将来性が乏しい国には資本は初めから向かわない。実は、そうした政治不安定、経済困難の国こそ優良な外国資本が必要なのである。つまり、経済の将来性が乏しく、投資リスクが乏しい国、地域は市場を通じた資源配分のメカニズムから排除されてしまうわけである。その結果、そうした国、地域では経済は一段と悪化し、将来の希望の無いまま社会・政治不安が増幅され、紛争が発生しやすい環境が生まれる。
 次の図は、経済と政治の状況と社会の安定度合いの関係についての一つの仮説の概念図である(東京大学助教授・田中明彦氏の作成した図を修正)。アジアは経済発展の中で地域紛争が管理され、戦後最も平和な状況(アジア・モデル)。


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