入することに幅広い世論の支持があったが、これも、こうした社会的市場経済の目を見張るような成果のゆえであった部分が大きい。
東西両ドイツ間で経済・通貨・社会同盟がむすばれたことで、旧西ドイツの既成社会システムが旧東独にそのまま適用されることとなった。旧東独市民たちは一夜にして、購買力のある(他の通貨と)交換可能な通貨を手に入れたが、この喜びは、東独経済の大部分を破綻に導くことによってあがなわれたものであった。なぜなら、東ドイツ計画経済における非現実的な価格設定は突然厳しいコスト計算の前に一掃され、生産力の高い西側市場からの競争力の圧力によって完膚無きまでにたたきのめされてしまったからである。その後、ドイツ政府の発表によれば、現在までに、旧西ドイツ地域から旧東ドイツ地域に10億マルク以上の規模の資金がつぎ込まれるに至っている。
再統一から6年たった今も、新連邦州ではいまだ十分な自前の経済ダイナミズムは展開するに至っていない。依然として西から東への資金トランスファーは続いているにもかかわらず、経済復興プロセスは目に見えて鈍化してしまった。新連邦諸州がいまだ自前の経済復興とはほど遠い様子を、次のデータが示している。
- ドイツ全体の国内総生産に占める新連邦州の割合はたった11%に過ぎない。(人口比率は約20%である)
- 東独の域内需要のたった60%分しか東独地域で生産されていない。
- 工業生産拠点が乏しいため、新連邦州における工業生産はドイツ全体の工業生産のたった5%に過ぎない。
- 西独の産業と比べると、新連邦州の就労者一人当たりの売上高は3分の2にすぎない。
このように状況は深刻であり、困難は続いているが、他方で新連邦州における経済発展が模範的な近代化をもたらし、その結果投資と生産力向上をもたらしていることも忘れてはならない。新連邦諸州は既に今日、最新のテレコミュニケーション設備を備えており、そのインフラは他の追随を許さない。ただ工業生産性の水準だけは、まだ西のそれに比して明らかに下回っているのである。畢竟、成長チャンス、未来に向けてのチャンスは、技術革新的な産業やサービス業的比重の大きい産業にあることになる。私たちには、東独に生計を求める企業、とりわけ、新たな、成長能力のある企業が多く参入してくれることが必要だ。私たちは世界中で、そうした企業が見つかる限りどこでも、ここ日本でも、募集しなくてはならない。こうした企業が私たちのもとに拠点を構えてくれるよう、条件整備に心がけるのが、私たちの課題なのである。
II. グローバル化への欧州の回答の試みとしての経済及び経済政策の統合
ここ15年、世界の経済構造はこれまでにない激変を遂げてきた。世界貿易規模は世界総生産の3倍のスピードで、国際間の直接投資に至っては6倍のスピードで成長しつつある。