経済及び経済政策の分野での動きは、現在、全世界的に二つの「メガ・トレンド」に覆われている。それは経済のグローバル化とサービス社会への構造的変化である。さらに西側工業国においては、人口構造の変化という第3のトレンドが加わってくる。即ち、寿命が長くなると同時に出生率が減少していることで社会の老齢化が起きている。この3つの変化が相侯って、各国の経済に調整過程を強く迫っているが、その対処の仕方は世界各地で様々である。
ドイツは国際的な議論の中で、こう批判されることが多い。経済拠点としての議論をするが経済の衰退とは何かを分かっていない。また、非常に(コストが)高いと嘆くが、これまでどのような危機からも、より強くなって抜け出しているではないか。この点は日独共通である。確かに、経済拠点としてのドイツを悪く評価する報告がなされているとは言え、西欧諸国の中にさえ、ドイツの抱えるような問題を持ってみたいものだと考える国が幾つかある。
連邦雇用庁が1997年2月に発表した最新のデータによれば、ドイツ連邦共和国には現在460万人を超える失業者がいる。加えて110万人が雇用促進対策で働いているか、訓練を受けている。信頼に足る推計によれば、ドイツで600万から700万の雇用が不足しているというが、これは就業人口全体から見ると、ほぼ20%にもなる。この他、現実的な予測は全て、現状では雇用情勢に大幅な改善は見られない、逆に短期的にはむしろまだ悪化すると見ている。ところが、経済データは現在それほど悪くはない。1997年1月の政府年次経済報告は成長への良い条件は整っているという。物価は安定し、金利は低く、企業収益はさらに増え、賃金上昇は抑制的で、マルク相場も主要通貨に対して再び正常化し、輸出もダイナミックに伸びている。しかし、経済成長は約2.5%と、再び雇用増大をもたらす限度以下に留まるであろう。従って、失業対策が経済政策にとって長期的には最大の問題として残る。
中・東欧の中央統制経済が崩壊した後、世界の経済情勢は根本的な変化を見た。そしてドイツはこの変化を、経済体制の移行過程にある隣国や、自国内の経済体制の移行により、特に強く感じている。市場開放、とりわけ東欧と中国のそれは、数十年にわたって経済的にも社会的にも成功を収めてきた「ドイツ・モデル」を全く新しい競争条件下に置いた。ドイツの国民経済、そして他の欧州諸国の国民経済も同様だが、これらが置かれている状況は、これまでと質が異なるようである。我々は皆、世界市場における状況が変化したことを承知している。全世界の資本市場はほぼ完全に自由化され、企業は生産性に多少の差