あった。
これらの部門ごとにどのような改革が求められるか指摘したい。医療部門については、医療サービスの供給と需要の両面にわたって様々な改革が求められる。供給についてはいわゆる「社会的入院」をしている要介護者の病院から介護施設への移管、総額医療費制の導入、薬価基準の見直し、診療報酬請求制度の合理化などが推進されるべきであり、需要については、薬の償還払い制、一部自己負担の拡大、自己負担によるサービスの選択、かかりつけ医師制度の導入などが挙げられる。
これらの改革の基本は、供給が需要を作り出すとされる医療の本質的な無駄を排除ないし縮小するために医療に適切な市場機能を導入しようと言うことであるが、そのために克服すべき最大の課題は医師と患者の情報の非対称性をどれだけ是正できるかということである。情報の公開と評価制度はそのために強力に進める必要がある。
年金については、高齢化の下で不可避的に増大する年金支給額を、合理的にそして公平に節約する方途を導入することが肝要である。
年金の膨張は、後代への負担を必然的に高めないわけにはゆかない。現存する世代間でも、高年者と若年者との間では年金の生涯拠出額と受給額の現存価値の比率にはすでに10倍もの開きが生じている。現在予定されている年金拠出率の改訂計画に従えば、2010年頃には拠出率は収入の30%近くになると想定されており、その負担感の重さは勤労意欲を始め様々な側面に問題を生む可能性がある。
こうした負担の格差を多少なりとも世代間で縮小することが望まれる。それには高齢者による一定の負担を導入する必要がある。年金受給者に対する課税の見直しも必要だ。また、年金支給額は、1994年に総(グロス)所得スライド制から社会保険料・税金などを差し引いた純(ネット)所得スライド制へと移行し、将来の増大傾向に、ある程度歯止めをかけることになったが、さらに現在標準報酬(退職前5年間の平均収入)の6割程度とされている年金給付率をIL0128号条約でうたわれている4.5割程度に引き下げることを検討する必要があるように思われる。
最後に介護についてふれよう。高齢化に伴って介護の社会的二一ズが高まる事は避けられない。現在、日刺には約200万人の要介護高齢者が居るが、2025年にはその数が500万人を超えると予測されている。
これまで公的介護は税金で賄われてきており、そのため公的介護資源の配分は、公的機関が決める「措置主義」によって行われてきた。現在、公的介護保険制度を導入する事によって、介護サービスの受益者も介護の費用の一部を負担すると同時に、受益者にサービスの受給権と、ある程度の選択権を与えることが提案されている。
このような介護保険制度の導入は、高齢化の進む時代の要請に合致したもので、日本はこの制度の先進国であるドイツから学ぶべきところが多い。この制度の導入の前提として、