きである。また第5番目の自己啓発の支援は、知的労働の比重が高まっている今日、ますます重要であり、税制も合めて強力な支援を展開すべきである。
このようなプロアクティブ(問題先取り型)な政策を展開することによって、経済がその潜在力を効果的に発揮できるような自己改革をすべきである。
IV. 人口高齢化と社会保障の財政問題
日本の人口高齢化は世界の近代史にあまり例を見ないほどの速さで進展している。65歳以上の人口比率を見ると、1970年代には7%であったものが、1990年には12%となってアメリカ合衆国を抜き、1996年には14%に達してフランスを抜き、やがてドイツを抜いて2010年には20%、そして2020年には25%と言う人類未踏の高さになると予測されている。高齢化は他面では少子化である。日本のTFR(合計特殊出生率 total fertility rate)は1950年には3.65もあったが、1970年には2.13.1993年には1,46まで落ちた。その後、1994年には1.50に回復したが、今後とも当分の間低迷を続けると予想されている。
日本では人口が定常状態を維持するためにはTFRが2.08程の水準にある必要があるとされているが、1.50前後のTFRが続けば日本の人口は若年者層から減少してゆく。
日本の労働力は最近(1995年)では6700万人ほどあるが、2000年に6850万人のピークに達して以降は2020年までに6500万人ほどに減少すると見込まれている。言い換えれば21世紀の最初の20年間で350万人ほど減退するわけである。特に55歳以下の働き盛りの労働力はおよそ800万人も減少すると考えられる。
このことは、これまで極めて高い水準を誇ってきた日本の貯蓄率を急速に低下させることになるだろう。それは投資原資の減退を通じて日本経済の成長力を殺ぐことになる恐れがある。
人口の高齢化は他方で、社会保障給付を増大させる。日本の社会保障給付は1970年には3.5兆円で国民所得(M)の5.8%を占めていたに過ぎないが、高齢化の進展に伴って大きく膨らみ、1993年には56.8兆円でMの15,3%を占めるに至った。厚生省の推計では高齢化のさらなる進展に伴い2020年にはその比率が31%に倍増するとされる。
人々の社会保障負担も給付の増大とともに増大するが、2020年には、それはMの30%に達し、租税負担を加えると50%前後に達すると推量されている。この負担率は、年齢構造をコントロール(一定)して比較すれば欧州諸国より特に重いものではないが、介護や医療については未知の部分が少なくなく、現実にはもっと重い負担になる可能性もないわけではない。いずれにしても国民所得の5割に達する負担は、人々の就業意欲や企業の投資意欲に大きな影響を及ぼさないはずはない。