伴って一般財源から財政負担の増加は避けられず、財政にとっても大きな負荷となる。
第二は、豊かさの帰結である。日本もドイツも第二次大戦後の見事な経済復興と発展の結果、一人当たりの国民所得は世界最高水準となり、言うなれば最も豊かな国となった。
豊かさは人々のライフ・スタイル、とりわけ勤労者の就業行動に大きな影響を及ぼす。豊かになった人々は所得よりも余暇を選考し、仕事の選り好みをするようになる。
旧西ドイツは1960年代から1970年代にかけての高度成長期に労働時間の短縮が著しく進み、苛酷な肉体労働を嫌うドイツ人労働者の不足を補うために外国人労働者が大量に導入された。日本ではこうした変化はドイツよりも遅れて現実化したが、同様の社会変化が進行しつつある。
労働時間が短縮され、低賃金の労働集約的産業部門では労働力が構造的に不足するが、他方、失業補償の充実や人々の価値観の変化によって労働の最低供給価格が高まり自発的失業が増加し、労働市場におけるいわゆるミスマッチが増大する。
第三は、グローバリゼーションの影響である。情報、通信や交通、運輸などの発達により、生産や投資を媒介とした経済の国際的な相互浸透はますます拡大し、また深まりつつある。こうしたグローバリゼーションは世界的規模で進展しつつあるが、日本やドイツのような賃金水準の高い先進国はとりわけグローバリゼーションの大きな影響を受けやすい。
ドイツはEUの域内経済統合によって域内の貿易や投資が著しく促進されたため、産業構造や就業構造は必然的に大きな影響を受けたが、さらに、東西冷戦の終焉によって加速されたいわゆる“メガ・コンペティション(大競争)”の影響も受け、産業、就業構造はさらなる転換を迫られている。
日本は、引き続く円高によって貿易財部門の産業構造と就業構造はより労働節約的な構造への変革を余儀なくされてきた。これに比べ非貿易財部門は各種の規制や市場慣行などによってこうした紛争の脅威から比較的隔離されてきたが、近年のさらなる円高とメガ・コンペティションの圧力の下でいよいよ本格的な構造調整を迫られるに至っている。
グローバルな市場紛争圧力に対して、国内の産業構造・就業構造の改革が遅れれば、経済は空洞化し、また失業が増大する危険がある。日独両国はグローバリゼーションの波の中で共通するこのような課題に直面している。
以上に指摘したような内外の環境条件の変化が、日本やドイツのような成熟した先進経済社会に投げかけている共通の課題は、とりわけ(1)グローバリゼーションの進展、そしてとりわけ低賃金諸国からの追い上げに対していかに産業構造を高度化させ、比較優位を最大限に生かした活力ある経済社会を再構築するか、そして(2)高齢化が急速かつ不可逆的に進展する中で、いかにして財政負担を過度に高めることなく人々の生活の豊かさを維持するとともに安心した老後生活を営めるような社会経済システムを再構築するか、というこ