東アジアの特色をヨーロッパとの対比でみると、次のとおり挙げられるが、東アジアは特に政治・安全保障面で西欧・北米と異なっている。
(1)冷戦終結により、欧州では共産主義政権が崩壊したのに対して、東アジアでは、中国・ベトナム・北朝鮮・ラオスの各国で、共産主義政権が依然として継続している。
(2)東アジアでは、朝鮮半島における南北の対立と大陸中国・台湾間の緊張という、東西対立のもとで生じた深刻な国際紛争が依然として存統する。また、自由主義的民主主義と共産主義との体制的対立がみられる、北朝鮮では体制が崩壊する可能性があるが、その崩壊過程が平和的であるとの保障はない。
(3)東アジアでは冷戦の終結が帝国的秩序解体の引き金となり、新しい民族的対立を生み出すという事態は起こっていない。経済発展により、東アジア諸国の政治的安定度は高まり、内乱やゲリラ活動はほぼ平定された。
(4)目覚ましい経済発展と、地域内の結びつきの緊密化がアジアでみられる。日本に続いて「四つの竜(韓国、台湾、香港、シンガポール)」が顕著な経済成長を示した。さらに、アセアン諸国、中国の沿海部が続いたことにより、東アジアは世界の経済成長センターになった。地域内の貿易・投資が急拡大した結果、東アジアは歴史上初めて一つの地域としての実体を具えるようになった。地域的まとまりの意識がアジアに生じたことには画期的な意義がある。
(5)産業化の発展は、自信とナショナリズムの台頭をもたらしている。特に国際関係で重要なのは、中国が強大な国家として現れ始めていることである。急速な経済成長と軍事力の拡大により、中国は過去2世紀で初めて軍事・経済大国として国際社会に再登場しようとしている。
日本とドイツはアメリカに次ぐ経済大国であり、各地域で経済的に指導的役割を果たしてきたこと、核を持たないこと大国という点で共通している。このような状況下において、日独両国の特色と役割を整理すると、次のとおりである。
(1)日本とドイツはアメリカと協力し、アメリカが唯一の軍事超大国として、世界の平和の維持と持統的繁栄に特別の指導的役割を果たし続けることに協力することが重要である。特に東アジアではアメリカは軍事的ブレゼンスが大部分の国から歓迎される唯一の大国であり、誠実な仲介者としての役割を果たすことのできる唯一の国家と認識されている。非核大国である日本とドイツは、アメリカが指導的役割を果たすことに必要な負担を負う能力を先進民主主義国の中でもっとも多く持っている。
(2)非核大国として国際社会の安定に協力して積極的役割を果たすことが大切である。軍備管理・軍縮の促進、大量破壊兵器の拡散防止、国連の平和維持・平和創造機能の強化、未