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業労働者が給与を貰えない状態は、社会に危険な火種を生むものであり、懸念される状況にある。
 政治・経済改革の大きな前進にも拘わらず、70年間にわたった共産主義を克服し、民主的な市場経済の国を建設するには、数世代の時間がかかるだろう。ロシアはこの大きな目標を遠い将来に実現できるであろうと、ドイツ側は敢えて楽観的な見通しを述べた。ドイツ側の発表者は、「ドイツとロシアの関係が順調であった時期は、常に両国にとって良い時期であった」とのレベジ将軍の発言(97年1月、於:ミュンヘン大学)を引用し、ドイツとロシアの関係が良好な期間は平和が維持できることは歴史が証明している、と強調した。




 第四セッション「多国間枠組みにおける日独の新たな役割と協力関係」

第四セッションでは、「多国間枠組みにおける日独の新たな役割と協力関係」を議題として取り上げ、日本側からは、佐藤誠三郎・世界平和研究所研究主幹が、「政治・安全保障分野における多国間枠組みにおける日独の新たな役割と協力関係」とのタイトルのもとで、報告を行った。日本側の議論の要旨は、次のとおりである。

 現在、世界には190の国家が存在する。これらの国々を大別すると、(1)先進民主主義国(アメリカ、日本、ドイツ等)、(2)国家的統合は保持されているが民主化は不十分な国家(権威主義体制の下にある発展途上国、旧共産主義国)、(3)帝国的秩序の崩壊後、複雑な民族・宗教紛争により国家形成に成功せず、無秩序状態が広がる国(サブ・サハラ、旧ソ連、ユーゴスラピア)の3つに区分できる。

 先進民主主義国の重要性が高まっている。先進民主主義国の特徴としては、(1)基本的に安定していることであり、共産主義体制の崩壊が相次ぐのと好対照をなしている。次いで、(2)産業化、豊富化を達成していることであり、産業化の動力の技術革新をリードしているのに加えて、途上国援助に積極的役割を果たしている。さらに、(3)平和への貢献を挙げることができる。先進民主主義国間の戦争は、これまで一度も生じていない。先進民主主義国は基本的に、現状維持国家であり国際秩序維持的である。先進民主主義国間の関係は基本的に平和的である。このため、今後の世界平和は西側同盟の結束に依存している。

 

 

 

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