人口高齢化と社会保障の財政問題は、喫緊の課題である。
日本においては、急速に高齢化が進んでいる。社会保障費用の増大は国家財政にとって大きな負担となる。日本の公的債務残高は、いわゆる“隠れ借金”を含めれば国民総生産の100%に達しており、このまま行けば利払い費用により財政はコントロール不能な状況になる。国民負担率も2020年には50%を超え、勤労意欲を阻害しよう。また、高齢化は貯蓄率の低下をもたらし、日本経済の成長力を抑制する。
対応策は2つ考えられる。一つは、負担能力を強化することである。女子・高齢者の活用により労働力を増加させること、研究開発投資・設備投資により技術革新を進め、生産性を向上させることが考えられる。但し、貯蓄率低下、人口減少といった大きな制約要因がある。尚、外国人労働力の導入は、将来の負担増大を招くものであり、問題先送りに過ぎないことを付言しておきたい。
従って、対応策としては、社会保障費用を必要範囲内に抑え、節約することが必要である。医療保険については、供給が需要を作り出してしまう状態を改善するため、需要側と供給側の情報の非対称性を是正することが重要である。具体的には、薬価基準の廃止、定額払い制度の導入、患者のコスト意識増大のための償還払い制度などがあげられる。
年金については、高齢者と若年者の世代間格差の縮小が不可避であり、年金給付率の引き下げも検討せざる得ないだろう。
介護保険制度については、先達のドイツから学ぶべきところ大であるが、導入の前提として、サービス供給体制の整備、財源の検討(公的負担と自己負担のバランス)、民間サービスの活用に留意すべきである。公的サービスがいたずらに拡大することの危険に警鐘を鳴らしておきたい。
一方、ドイツ側からは、アンドレアス・トラウトフェッター・チューリンゲン州大蔵大臣が報告を行った。ドイツ側の議論の要旨は、以下の通りである。
現在世界には、経済のグローバル化、サービス社会への構造変化という二つのメガトレンドがあり、さらに先進国には人口構造の高齢化というトレンドがある。この状況下において、企業はどこにでも自由に拠点を移せるという産業立地の問題にドイツは直面している。また、経済状況はそれ程悪くないのに、失業状況に改善が見られないという問題を抱えている。
旧東独地域の新連邦州は、経済体制の移行と産業空洞化の問題を依然解決できていない。“社会的市場経済”は自己責任原則と人間同士の連帯を両立させたドイツの発明である。社会的市場経済の成功を背景に、ドイツ統一により、旧西独システムが旧東独へ適用された。