られ」「死角が生じた」「居眠り」「第三船に気を取られ」「漁労作業に気を取られ」などの要因が多い。

見張りを防げる要因と漁労環境の各項目および漁業種類と漁労環境の各項目において、衝突が出現した確率が高い(P≦0.05)関係について表1、2にまとめた。

49の「第三船に気を取られる」、55の「機関調整、点検」等のようにいずれの漁労環境とも関連性を示さなかった項目は除いたが、例えば「居眠り」は時間帯としては00〜06時、二〇トン以上の漁船、特に底びき網漁業、漁労作業前、自動操舵使用時、全速航走中等と強い関連を示した。

「疲労」は00〜06時、漁労作業前、自動操舵、船速は全速と強い関連を示した。見張りを妨げる要因と漁労環境との関係において、特徴として「居眠り」または「疲労」が原因で衝突事故が生じるのは、漁労作業後よりむしろ漁労作業前であり、二〇トン以上の漁船で、特に底びき網漁業では「居眠り」「衝突はないと思いこむ」または「魚探の調整」により見張り不十分に、また五トン未満の刺し網、かご漁業においては「漁労作業に気を取られて」見張り不十分になる等が挙げられる。漁業種類別の漁労環境では、釣り漁業においては一日以上の長期にわたる航海において「休息」または「待機中」に同業船との衝突事故が発生し、かご漁業においては「漁労作業中」に異種漁船との衝突事故が発生するという特徴が見られた。

 

表1 見張りを妨げる要因と漁労環境との関係(P≦0.05)

漁業作業に気をとられ 魚探の調整、監視 無線連絡 居眠り 疲労 衝突はないと思い込む
総トン数5トン未満

刺網、かご漁業

漁労作業中

操舵は自動、その他

船速は微速、及び漂泊中

20トン以下

底曳網

漁場移動中

12時から18時

6時から12時

出港後24時間以上

0時から6時

20トン以上

底曳網

漁労作業前

自動操舵

船速は全速

0時から6時

漁労作業前

自動操舵

船速は全速

12月〜2月

出港後半日〜1日

風力2〜3

20トン以上

底曳網

自動操舵

船速は半速

休息中 その他作業に気をとられ 死角が生じた 椅子に座り見通せず 視覚的問題  
日本海側

急速、待機中

津軽海峡

12時から18時

出港後半日〜1日

釣り漁業

漁場移動

船速は半速

6時から12時

太平洋側

漁場移動中

自動操舵

12月〜2月

6時から12時

10トン〜20トン

釣り漁業

18時から0時

5トン未満

手動操舵

 

表2 漁業種類と漁労環境との関係(P≦0.05)

 

刺網 釣り 底曳網 かご
12月〜2月

出港後6時間未満

10トン未満(特に5トン未満)

噴火湾、オホーツク海

手動操舵

6月〜11月(特に9月〜11月)

出港後半日以上(特に1日以上)

10〜20トン

日本海

休息、待機中

同種漁船との衝突

3〜5月

出港後半日〜1日

20トン以下

自動操舵

3月〜5月

漁労作業中

異種漁船との衝突

5〜10トン

 

5、 人間エラー発生と漁業環境漁船海難における人間エラーとして挙げられる操船者の「見張り不十分」事例の中で、人間エラー発生の原因とされる「居眠り」「疲労」または「思い込み」等と事故発生時間、自動操舵による運航など漁船の漁業環境との関係をさらに明らかにするために、北海道南部の噴火湾沿岸の漁船漁業従事者を対象にアンケート調査を行い分析した。

調査地域は図3に示した。調査項目の内容については以下の九項目とし、あらかじめ選択肢を設けて回答してもらった。

@漁業種類(刺し網、ホタテ養殖、その他の漁業)

A操業時間(六時間未満、六時間以上)

B睡眠時間(五時間未満、五時間以上)

C眠気(眠気は感じない、全速力で船を運航中、自動操舵で運航中、いすに座っている、早朝、深

 

 

 

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