乗揚げた事例
ケース1
初めて行った釣場からの帰途、同じ方向に航行していた小型漁船に続航して、水面下の瀬(干出岩)に接触、浸水し航行不能となった。
ケース2
初めての海域を航行中、海図で水面下に瀬(干出岩)があるのは確認していたが、瀬に立てられた標識の近くを漁船が通っていたので、瀬は標識の付近だけと思って航行し乗り揚げた。
◎Lead & Location
いずれのケースも水面下に瀬があることは知っていたのですが、小型漁船が航行するのを見て続航し乗り揚げたものです。
初めての海域を航行するのに何も確かめずに航行するケースを見受けますが、勇気がある?なとほめたいところですが、予め潮の干満や海図などで水深や瀬の広がり具合を確かめておくことはやはり基本です。漁船が航行しているから自分の艇も大丈夫と思って事故につながるケースが多いようですが、特にクルーザー型のモーターボートは、水面からアウトドライブの下端までが案外深いのではないでしょうか。事故例では、いずれも一メートルを超えていました。漁師さんは海を自宅の庭のように知り尽くしていますので、漁船の後をついていきたい気持ちは分かりますが、小型漁船の喫水は余り深くありません。ご用心。
衝突した事例
ケース1
釣場から帰港中、イケスの魚の様子を見ようと減速したところ、後方から接近した
30ノットの高速艇が追突した。
◎Lookout
これは、高速艇が前方をよく見ていなかったものですが、減速するときや釣場に着いて漂泊するときは、後方の確認もお忘れなくということでしょうか。
あなたが航行する所は、他船も航行しますし、良く釣れる所にはどの船も集まってきます。
プレジャーボートは、眼高が低く高速で、しかも相手も小型なので、遠くまで見えているようで見えていないのかもしれません。
◎帰り道にご用心
衝突事故の場合は、原因=見張り不十分といえるのですが、傾向として二隻のうち大きいほうが小さいほうに衝突するケースが多く、また、帰り道に事故を起こすケースが多いようです。
漁船の場合は、徹夜の操業に疲れて注意力が散漫になるのは分かりますが、プレジャーボートも同じことが言えるのでしょうか。
ケース2
釣場へ向けて航行中、前方に白い発砲スチロール状の”ゴミ”が浮いているのが見えたので、近づいてから避けようとして、下を向いて釣具の準備をしていたところ、漂泊して釣りをしていたボートに衝突し、滑空して停止しました。
釣りをしていた親子は海に投げ出され、気がついた時は、
10メートルも離れた所で泳いでいたそうで、二人とも救命胴衣は着用していませんでしたが、浜辺で育って泳ぎが達者であったことで命拾いし、お父さんは顔に
20針も縫う大けがをしましたが、お嬢さんは無事で、衝突した時、顔の上を相手船の船底が飛んでいったと恐怖の瞬間を話してくれました。
お嬢さんは海が大好きだったそうですが、その日から「海なんか見たくもない。」と言っているそうです。
とても残念なことですが、この事故もやはり見張りをしていなかったことによるものです。
◎Log
最初に”ゴミ”と見誤ったときの距離は、約千メートルでした。この距離では海に浮いているゴミに見えたようです。これは、
15ノットの速力で
2分、
30ノットでは
1分ほどの距離です。
小さな艇、低い眼高から周りを見ていると海を広く感じるのでしょうか。でも速力を物差しにすると海は意外と狭いものですし海の広さを物差しにするとマイボートがいかに小さい物かお気付きのことでしょう。
ところであなたの艇はどの位の速力がご存じでしょうか。機関の回転数はよく知っていても、意外と速力をご存じない方が多いのです。
・あなたの船は何ノット出ますか。
・1
分間にどの位航走しますか。
・どの位前方が見えていますか。
・見えているところまで何分かかりますか。
知っていて損はありません。チェック!
◎招かれざる客
錨泊や漂泊して釣りをしているときに衝突されるケースも結構見受けられますが、他船が接近していることに気付いているケースもかなりあります。相手船が見てくれている、近くにくれば避けてくれるはずだと思われているようですが、わざわざ他船に向けて航行する必要性はないですし、良いマナーとは言えません。自船に向かってくる船が有れば、まず前を見ていないと思って対処した方が無難です。見張りをしていたとしても船首が浮き上がって船首方向に死角ができ、見えにくくなっていたり、帰りを急ぐあまり、注意力が散漫になっていることが多いのです。それに航走波を立てていないときのあなたのボートは、海の上では小さな存在なのです。(次号へつづく)