日本財団 図書館


 

にもいえることは、社会生活への順応を重視するという考えから口話主義教育を徹底するということが明らかでした。私は、今まで、何故、自分が声を出して喋らなきゃならないのか、何故健聴者の声を耳で聞かなくてはならないのかという思いでしたが、ヨーロッパのろう教育事情を視察した折、“手話で教育を行えば、子供達の視野をもっと広げることができるはず”と思っていた自分が場違いだったと感じます。けれども、それと同時にヨーロッパのろう学校の読話と口話教育法あるいは言語指導が日本より優れていることを改めて知りました。今回の経験で、日本での多様な課題を抱える聴覚障害児教育において、これからの教育をどうすべきか、価値観を比較しつつ考察することができ、大いに収穫を得ることができたと思います。

余談ですが、私が一番印象的だったのは、オーストリアの学校内にあった博物館です。戦後(現在の所へ引っ越す時、古い物を捨てるのはもったいないので、展示を考えたのだそうです。)学校の古い物を集め、洗練された博物館を作ったということは、歴史的に興味を持つ上でも、大変素晴らしく思いました。

ヨーロッパ各国で、その人達と素晴らしい交流をすることができました。私は自分と同じろう者の先輩たちが過去にどんなことをしてきたかを把握し、それを次の世代へ伝えていくことは大切なことだと思います。ヨーロッパのろう者の方達にも歴史はあります。言葉の壁はあったけれど、徐々にヨーロッパの手話を覚えるようになり、過去にあった歴史的事実を少し知ることができ、又、文化について学ぶうち、いろいろなことに気づき、異文化に対する敬意の気持ちを持ちました。残念ながら時間の都合で交流をもっと深めていくことができず、もの足りない感じです。外国のろう者の家族とホームステイを通して、文化、生活習慣など、多くのことを学び、有意義な日を過ごせたら…と、今、私が思いついたことです。

各国との交流を通じて数え切れない人達と接し、時を過ごしたこれらの出会い、私にとって忘れられない貴重な1ページになりました。

最後になりますが、私にこのような機会を与えて下さった(財)世界青少年交流協会、そして、15日間私達と共に行動したリーダーの角谷さんに心より厚く御礼申し上げます。

東欧の旅〜ハンガリーから〜

美土路教子

ドイツ、オーストリア、ハンガリー、フランスそれぞれの国の文化、そして東欧の福祉事情、現状についてこの目で確められたこと、勉強する機会に恵まれたことを、日本船舶振興会、そして世界青少年交流協会に厚くお礼を申し上げます。

日本の福祉の現状を把握していないのは勿論、これから訪問する各国の事情を私が学んでよいものかどうか、初めは大変戸惑いました。しかし、人と人との出会いは、様々な発見やドラマがあり不思議なもので各国の交流、研修を終えて、本当に一つ一つが貴重な、かけがえのない体験となりました。

東欧の旅は、どれ一つをとっても忘れられない素晴らしい思い出になりました。各国それぞれ独特の雰囲気を持ち、人、文化、建築物、美術館、街…全てが刺激的で新鮮でした。ドイツのハイデルベルク、ローテンブルク、フランクフルト、オーストリアのウィーン、ハンガリーのブダペスト、センテンドレ…。中でも特に強く印象に残った街はブダペストでした。

ブダペストで一番大きい広場、英雄広場は両側に美術館が立ち、少なくとも50万人(!)の人が集まることが出来る、とのことでした。二つの美術館の一つ、国立古典美術館では、現地通訳を務めていただきました、ジョージ氏の案内で数々の名画や作品の説明を詳しく聞かせていただきました。限られた時間ではありましたが、氏の案内のおかげで大変有意義に鑑賞することが出来ました。

美術館の外観、そして荘厳な、堂々とした広い

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION