身体障害者訓練センターでは、社会における自立を目指し、多角的な教育を行っている。ここでは、各自の能力に応じて、根気よく作業がなされていた。また、寮は、明るく、自分の好きなインテリアや家具が選べるようになっていて、個性を尊重する福祉の基本精神が反映されていた。
連邦聴覚障害者学校では、やはり口話法が主流ではあったが、生徒達ものびのびと、学習しており、楽しんで学べる雰囲気作りが印象に残った。併設された博物館では、学校の教材や歴史的写真、生徒達の作品などが展示されており、興味深かった。
ハンガリー
難聴小学校、国立難聴者学校は、自然の採光を取り入れ、インテリアなども明るく柔らかな色調で、心地好い学習の場が提供されていた。教師の熱心さはもちろんのこと、生徒の積極的な態度は、各自の個性尊重が、反映している現われであろう。見学したいずれの教室も、生徒が生き生きと学習しているように感じられた。
難聴者協会では、会場一杯の会員が、伸びやかに手話で会話している光景を目にした。夜は、特別に我々のために劇を用意してくれ、遅くまで交流の輪が広がった。
フランス
前述の3ヶ国では、訪問・見学、交流などのプログラムが目白押しで、本当に慌ただしい日々であった。市内見学も含まれてはいたが、団員は外国の文化をのんびりと肌に感ずる余裕は少なかったと思う。手話通訳を介しての説明を、あたりの風景を見ながら把握して、書きとめるのは、非常に苦労が多いからである。ヨーロッパに居るのだという実感を、どの位味わってもらえたろうか。
その点、フランスでは、学校訪問や交流などが無かったので、他国との比較はできなかったが、市内見学、自由行動などゆとりのあるスケジュールのおかげで、団員はそれぞれの興味や、予定に従って、パリでの時間を満喫していた。最後の晩は、セーヌ川をクルージングしながら夕食をとり、お別れ会を催した。同船したイタリア人グループの陽気さにもあずかり、この夜は、船が傾くのではないかと心配するほど皆で踊り、ヨーロッパ最後の夜を飾ることができた。
環境の変化、文化的相違に加えて、ハード・スケジュールでもあり、その上寒暖の差が激しかったので、団員の中には体調を崩した人も多かった。しかし、全員が目的意識を持ち、どのプログラムにも真摯に取り組んでいたことが、印象的であった。また交流の場でも常に積極的で、言語や国境を越えて、相互の連帯感を実感することができた。今回の研修旅行は、私にとって、大変有意義な発見の連続であった。
最後に、この機会を与えて下さった日本船舶振興会(日本財団)、(財)世界青少年交流協会等の関係者の皆様、手話通訳の方々、そして一緒に15日間を過ごした班長をはじめ、素敵な仲間たちに深く感謝を申し上げる。今後ともこの事業の益々の発展を、心より祈念するものである。
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