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歓迎の辞

 

組織委員会    

委員長 荒 稲蔵

 

皆様、国際海事教育者協会戸田会長、同議長ZADE教授のご出席を頂き、42カ国、約200名の参加を得、大地震災害から復興目覚ましい神戸港において、第9回国際海事教育者会議が開催されるに当たり、組織委員を代表して歓迎のごあいさつを申し上げます。

IMLAは、1980年に第1回会議がオランダで開催されて以来、2年毎に継続的に開催されてきましたが、今回初めてアジアの地で開かれることになりました。

IMLAは、世界海事大学と共に、IMOの専門諮問資格を得て、船員の国際的な教育・資格制度について、勧告する役目を果しておりますが、海事教育に携わる学長、校長、及び教師等によって構成され、先端的な船舶技術を含む海事教育一般に対応する教育訓練手法に関する情報や意見の交換を目的とする、全地球的な海事教育者の集団であるこの組織の活動に対し、改めて深い敬意を表します。

先端技術を応用したシミュレータ訓練やGMDSS資格取得の強制化を盛り込んだ1995年STCW新条約が、1997年2月には発効する予定になっておりますが、IMOは、組織を挙げてフォローアップ活動を展開しており、各旗国が条約の遵守に向けて誠意を尽くすことが、条約の成果を実現させる必要条件であろうと思われます。

具体的にいえば、改正条約に沿う海事教育訓練手法やカリキュラムの整合性について、各国が相互に情報を交換し、助け合ってIMOで合意された要求を達成することが極めて重要なことであると思います。このような時、「先端技術と船舶運航」がメーンテーマとして選択されたことは、極めて適切且つ時宜を得ており、会議における各演題及びワークショップの内容も、目的に沿ったものであると思われます。

ところでこの機会に、メーンテーマに関わりの深いものとして、我が国が実施したもの及び目下進行中のものについて、いささか言及させて頂きたいと存じます。

一つは私自身も深く関わった「船員制度の近代化」であり、もう一つは「混乗」に関するものであります。

我が国は、1977年から略15年の長きにわたった船員制度の近代化実験を実施しました。これは、安全と経済効果を前提に、優れた造船産業を通して、船舶に取り込まれた革新的技術のストックと船員労働によるフローとのバランスを探りながら船内における就労と配員の合理的あり方を求める実船によるスケールの大きなものでした。その後、経済環境は大きく変化し、経済効果が期待できない状況に至り、日本人船員のみによる実験は中止されております。

又この試みそのものを巡って、様々な見解を耳にしますが、ともかくこの経験を通して、我が国の船員は、先端技術に対する適応能力を高め、職能間にわだかまる障壁を乗り越え、真に海に生きる新しい感性を身につけることが出来たことは事実です。

もう一つは、「混乗」に関する問題です。他の産業に比べ、海運は最も国際性に富んだものでありますが、グローバルで単一な市場における自由な競争を前提とする限り、「混乗」は労働力の需給を調整する自然な姿であろうと思われます。

 

 

 

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