第1章
海洋国家日本を支える 〜海洋船舶事業
第1節 時代が求めた「船」から「海」へ視座の拡大
創立以来日本財団は、これまで造船と海運の振興に主軸を置き長年にわたり積極的に関わってきた。加えて、この10年間は、21世紀を見据え事業対象の視座を、より総合的なものとした「船」から「海」へと質・量ともに拡大を図った。
人間の営為による海洋への依存と負荷は今後ますます増大する。海洋汚染の例を引くまでもなく、海洋の分野は、グローバル化の急速な進展により、一国一省庁だけでは解決できないまでに問題が複雑化している。しかし、この分野での我が国の総合的海洋管理政策は、海洋国家というには不十分な状況にある。21世紀に向けて海洋の諸問題を直視し時宜に合った事業を展開すべく視座の幅を広げたものだ。
海洋船舶事業数と助成金の推移
年度 |
1992 |
1993 |
1994 |
1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
件数 |
174 |
183 |
191 |
201 |
212 |
255 |
238 |
220 |
227 |
219 |
金額 |
2,329,963 |
2,047,929 |
1,940,355 |
1,738,232 |
1,524,564 |
1,794,935 |
3,682,017 |
1,642,727 |
1,336,577 |
2,944,779 |
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1996年は、我が国にとって国連海洋法条約の発効と、7月20日を「海の日」として国民の祝日に制定するなど、海洋についての新たな第一歩を踏み出す節目の年であった。
本財団では、海洋立年とも言えるこの1996年から1999年の4ヵ年にわたり海洋の実情と今後の重要課題を広く世に問うべく、内外の有識者を集め、歴史、民俗、資源、環境など幅広い視点から人類社会と海洋との関わりをテーマに一般に向け「国際海洋シンポジウム」を主催した。
さらに2000年から2002年までの3ヵ年にわたって、海洋政策とその推進体制の在り方を探るため、外部有識者による海洋管理についての研究会を設置、議論した。2002年3月には「海洋と日本・21世紀のわが国海洋政策のあり方についての提言」に取りまとめ、内閣はじめ国会議員、関係省庁、産業界、研究者へ提示した。我が国初の民間からの海洋についての総合的提言であった。
一方、これまでも積極的に推進してきたマラッカ・シンガポール海峡の安全対策事業に加え、アジア海域における海上交通・海洋環境等の情報交換促進とこの分野での人的交流を強化するため、1996年シンガポールに(社)日本海難防止協会連絡事務所を開設した。マラッカ・シンガポール海峡安全対策事業の一環として新たに海賊問題への取り組みがある。近年多発・凶悪化する東南アジアの海賊問題については、民間組織として本財団がいち早く取り組み、我が国での海賊対策の中心的役割を担うまでに至った。
また、造船分野への先端技術、高度技術の導入のため、高度CIM、テクノスーパーライナー、メガフロートなどの開発研究に積極的に取り組み大きな成果を上げた。海上安全航行面での人材育成の分野でも、世界規模での新たな取り組みを開始した。1987年から継続実施している世界海事大学への支援に加え、船員教育訓練の国際化を進めるべく、2000年には世界28校の商船・海事大学からなる国際海事大学連合を設立し支援を開始した。こうした視座の拡大に伴い部組織も、1999年に海外事業課を新設するとともに、2000年から2001年には国内事業課に暫定的にリサーチチームを設けた。我が国が21世紀に真の海洋国家として国際社会の中でリーダシップを発揮することを期待し、今後も海洋全般について先駆的活動を展開していく。
日本の商船隊の国籍別船員比率 (日本財団調査2000年1月1日現在)
海洋船舶部調査研究事業の報告書
世界の新造船建造業の推移
(拡大画面:48.0KB) |
(注) |
1.ロイド資料より作成(100総トン以上の船舶を対象) |
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2.崚工ベース |
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3.棒グラフの中の数値は構成比を示す。 |
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